【研究成果】色と匂いの記憶 ―同じ部位で記憶―
https://ton-press.blogspot.com/2014/11/blog-post_5.html
ショウジョウバエの脳内で、色と匂いに関わる記憶はそれぞれ同様の神経回路を使って処理されることが分かった。本学生命科学研究科の谷本拓教授らのグループが明らかにした。
ショウジョウバエは脳内にキノコ体とよばれる構造を持つ。キノコ体は匂いの記憶(嗅覚記憶)の形成に関わることが30年以上前から知られている。同時に、色の記憶(一部の視覚記憶)形成には不要だという仮説が実験で示されていた。
しかしこの仮説には課題が残されていた。
用いられた実験が嗅覚記憶のものとまったく異なっていた。嗅覚と視覚の記憶に関する研究者がそれぞれ独自に実験を進めたからだ。「同じ環境下で確かめなければ、仮説が正しいかどうかは分からない」と谷本教授は話す。
用いられた実験が嗅覚記憶のものとまったく異なっていた。嗅覚と視覚の記憶に関する研究者がそれぞれ独自に実験を進めたからだ。「同じ環境下で確かめなければ、仮説が正しいかどうかは分からない」と谷本教授は話す。
嗅覚記憶の形成に関する実験方法は「報酬」と「罰」を用いたもので、砂糖水の匂いをもとに行われる(図参照)。教授らは砂糖水の代わりに色紙を敷いたシャーレをもとに行う方法を2010年に考案。結果として今回、ショウジョウバエが色に関する記憶を嗅覚と同様にキノコ体で処理していることを突き止めた。
谷本教授は今後、報酬に関する情報がショウジョウバエの脳内でどのような神経回路によって伝達されているのか解明したいという。同時に、神経構築の分野に対して生物に限らず広範囲からのアプローチを望む。たとえば装置の組み立てには工学の、行動実験の設計には心理学の知識が役立つ。教授は「自分の専門には関係ないという学生にも、興味を持ってもらえれば」と語った。