【書評】『ガイコツと探偵をする方法』 レイ・ペリー 創元推理文庫
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今回紹介する『ガイコツと探偵をする方法』にも死体が登場する。彼の名前はシド、ジョークが好きで犬が苦手な、ガイコツと化した何の変哲もない死体だ。歩いて喋ることが出来ること以外は。
そう、本書のタイトルは決して比喩の類ではない。この物語は主人公ジョージアが、友人であるガイコツのシドと共に謎に立ち向かう、まさに「ガイコツと探偵をする方法」を描いたものなのだ。
大学の非常勤講師として仕事不足と薄給に苦しみながら働くシングルマザーのジョージアは、故郷の街の大学に勤めるために娘のマディソンと共に両親の家を訪れ、そこで子どもの頃からの親友であるシドと再会する。ある日シドが彼女に連れられてこっそり参加した大学のパーティで「知っている人の顔を見た」と言い出したのをきっかけに2人はシドの失った生前の記憶を調べ始める。しかしそんな2人を待っていたのは、生前のシドが殺されたという事実だった。さらにシドの記憶の手がかりを握っていた女性も殺されてしまう。
本格的な推理小説を好む読者の中には、現実離れしたシドの設定に眉をひそめる人もいるかもしれない。しかし心配は無用。ジョージアとシドの前に起きる事件とそれを解き明かしていく過程は緻密な描写に支えられたリアリティのあるもので、謎解きの楽しみも十分味わえる。
とはいえ、本書の真の魅力はやはり個性的な登場人物たちにある。仕事探しや新しい恋に苦労しながらも皮肉っぽい口調でそれらを乗り越えていくジョージアの姿には共感を覚えるし、マディソンとの親子の掛け合いは微笑ましい。ジョージアの姉でシドの存在を認めない現実主義者のデボラも人間味あふれる外せないキャラクターだ。
そしてジョージアとシドの友情。親友の為に謎を解こうとするジョージアの熱意と、必死で彼女の幸せを守ろうとするシドの姿は感動と涙を誘う。
「生き生きとしたガイコツ」というと矛盾して聞こえるが、本作のシドにはそんな言葉がぴったりだ。奇妙だけれど面白くて暖かい家族と友情の物語を、本書を通してぜひ味わってもらいたい。