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【漫画評】『はれた日は学校をやすんで』 西原理恵子 双葉文庫

 何故学校に通わなくてはならないのか――誰しも一度は考えたことのある問いではないだろうか。そして私たちはその問いに対して、明確な答えを見いだせているだろうか。




 今回紹介したい作品は、西原理恵子の『はれた日は学校をやすんで』。1990年代に雑誌で書かれた短編漫画の自選集である。西原が得意とするブラックユーモアの効いた作品もあれば、代表作『いけちゃんと僕』のような深い読後感を与える作品も収録されている。バランスの取れた作品集だろう。

 表題作の主人公は中学生の多感な少女「めぐみ」。めぐみは自らの置かれている立場、そしてそれに求められる態度を把握している一方、自分自身の気持ちの整理ができていない。そのため、つい学校を休んでしまう。淡い筆致で描かれる、思春期の微妙な心の揺れ動きを、もどかしいほど感じられるだろう。

 穏やかに見守る父に少し厳しい母、同じ年代だからこそ諭す同級生、孤独な中年担任教師などとの交流を通じて、めぐみは少しずつ大人になっていく。そうして成長していくにつれ、めぐみは学校に通うことを受け入れていくようになる。だが、めぐみは最後にある思い切った行動をする。鮮やかに描かれたそのシーンには、作者の強いメッセージが込められている。

 人間は、個人的な事情よりも社会性を重んじなければならないことが多々ある。だから皆、休みたい気持ちや逃げたい気持ちと折り合いをつけ、何とか乗り越えていく。しかしそれがどうにも苦手な人もいる。「どうしてそんなこともできないのか」。かつてそんな言葉を投げかけられたことがある人は確かにいるはずだ。作者が軽やかに描くラストシーンは、そうした人々を受容し、肯定してくれる。一人ではない、味方はいるのだ、と細やかながら強く伝えてくれる。

 この『はれた日は学校をやすんで』は表題作以外にも名作が揃っている。日々の中で何となく疲れて、投げやりになってしまった時、この漫画を開いてみると良い。この作品はそんなあなたに寄り添ってくれるだろう。
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