【書評】『お茶のすすめ』 川口澄子 WAVE出版
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著者が体験したことは漫画のような様式で、専門的な物事には文章と図を併せて説明している。格式ばった描写を避け失敗談、余談がたくさん詰まっており、親近感を湧かせる。
本書の構成はまず著者が茶の湯の世界に出会う時から始まる。きっかけや先生とのやり取りなど何も知らない状態から好奇心旺盛に学ぶ姿がコミカルに描かれている。
続けて道具、点前、所作、茶室、お茶会などについて解説する。専門用語を避けているので、茶道を知らない人でも理解しやすい。
全体的に簡潔な紹介になっているが、各章の最後にコラムが合わせて六つある。それぞれ単発で、本編に入らなかった文化や著者の経験が盛り込まれている。お茶を飲む時に音を立てていいのか、お稽古にどのような服装で臨めばよいのか、掛け軸の文字についてなど、ふと思いつく疑問に答えている。他にも茶道にまつわる「買いもの七則」と表し、買い物での心がけを教えてくれる。これは茶道に限らずみなさん日常にありふれたことではないだろうか。
著者独特の視点から捉えているので、一般的な入門書では触れない話もある。それは陶芸家や呉服屋でのエピソードである。例えば呉服屋ではどのようにして着物を選べばよいのか、職人の視点からレクチャーされている。
現代を生きる私たちの中には「茶道」を敷居の高いものとし敬遠しようとする面を持つ人がいる。しかし本書は「茶道」に対する認識を改めさせるきっかけになる。茶道に興味はあるけれどまだ始めていない人なら茶道が親しみやすいものだと考え直すことは間違いない。また本書に著者の流派は言明されておらず、流派にこだわらず誰でも気楽に読むことができる。本書を手に取って著者とともに茶の湯の世界を覗いてみてはどうか。