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【特集】文学の歴史紡ぐ東北の作家たち ~芥川賞作品を多数執筆~

 今、東北文学が熱い。今年7月18日に発表された第159回芥川賞に、青森県十和田市出身の作家・高橋弘希さんの『送り火』が選ばれた。『送り火』は、中学3年生の主人公が引っ越してきた青森県の田舎町を舞台に、廃校寸前の中学校で行われているいじめを描いた作品である。東北地方の豊かな自然やねぶた祭りなどの描写が高く評価された。




 近年の芥川賞受賞作品は東北地方にまつわる作品が多い。前回の第158回には、軽快な東北弁を交えた文体で、夫に先立たれた女性の孤独な老後を描いた、若竹千佐子さん『おらおらでひとりいぐも』が選ばれた。岩手県遠野市出身の若竹さんは芥川賞史上2番目の高齢受賞でも話題となった。新たな老いの境地を開いた本作品は「玄冬小説」とも呼ばれる。

   また、前々回の第157回芥川賞受賞作品である、沼田真佑さんの『影裏』では、東日本大震災後の東北を舞台に、同性愛者の主人公と音信不通となった同僚との関係が描かれている。本作は「マイノリティー文学」「震災後小説」とも呼ばれ、高橋さんの『送り火』と同様、豊かな自然の描写が魅力とされる。

   東北は、文学史にその名を刻む多くの作家を生み出してきた。「小説の神様」と名高い志賀直哉をはじめ、太宰治、寺山修司、宮沢賢治、横光利一、三浦哲郎と枚挙にいとまがない。太宰治の『津軽』では、『人間失格』に代表される鬱屈とした作者のイメージとは異なり、津軽半島への旅で出会う人々との楽しい交流が描かれている。

   東北各地には、作家ゆかりの観光地も多く、青森県五所川原市にある太宰治の生家「斜陽館」や三沢市にある「寺山修司記念館」が有名だ。仙台市には井上ひさしが初代館長を務めた「仙台文学館」があり、仙台市や宮城県にゆかりの近代文学に関する資料の収集・展示を行っている。

 昨年には新たに、東北をテーマにした文学賞である「仙台短編文学賞」が創設された。第2回を迎える今年度の選考委員は仙台市在住の直木賞作家・熊谷達也さんが務める。現在大きな注目を浴びている東北文学。新たな作家の発掘に期待がかかる。
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