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【オープンキャンパス2019・教員インタビュー】工学研究所航空宇宙工学専攻・浅井圭介教授

 工学研究科航空宇宙工学専攻の浅井圭介教授は16年前に本学に赴任した、航空宇宙工学の第一人者である。今回のインタビューでは、浅井教授に普段の研究や、本学に研究室を構えるまでの経緯などを伺った。

―研究内容は

 航空宇宙の分野で世界と肩を並べるレベルの実験技術の研究をしています。昨今はコンピューターによるシミュレーターを用いて航空機の状態を調べることが主流です。しかし、それでは実際に航空機を飛ばしたときに、シミュレーターでは考慮できない自然現象による力や、シミュレーターの計算の中で簡略化のために生じる誤差の影響を受けるかもしれません。つまり、理論上安全な機体を開発したとしても、それが本当に安全かどうかは、実際に飛ばすまで誰も確認できていないわけですよね。そこで、我々はシミュレーターではなく、実験によって風圧を計測できる「感圧塗料」や、磁力で完全に空中に物体を浮遊させることができる「磁力支持装置」など世界的にもユニークな技術を開発しました。

―風圧を計測する感圧塗料の原理は

 感圧塗料は、実際には風圧そのものを測るのではなく、航空機の翼の表面の酸素分子の割合を示す塗料です。通常の状態では空気中の酸素の割合は約2割ですが、風圧をかけていくと、徐々に酸素濃度が上昇していきます。つまり、酸素濃度と風圧は比例します。ここで塗料として用いるのはルテニウム錯体や白金ポルフィリン錯体などの発光性の金属錯体です。これらの錯体は紫外線やX線などの光が持つ光エネルギーを吸収し、錯体そのものが輝く反応を示します。しかし、酸素分子は光エネルギーで励起された錯体のエネルギーを奪う性質を持つため、結果として酸素分子が衝突した金属錯体のエネルギーが減って、錯体の発光の強度が弱まります。この性質を利用して、錯体の発光の度合いから塗料表面の酸素濃度を測定し、その結果から風圧を測定することができます。

―本学に研究室を構えるまでの経緯は

 子どもの頃から飛行機やロケット、そしてNASAに憧れていました。1年浪人して、京大の航空工学科に合格したのですが、学生時代は勉強というよりは塾の講師の助手や家庭教師のアルバイトに明け暮れていました。学部卒業間際に、友達に誘われて公務員試験を受けたのですが、その年に偶然「学部卒の公務員資格保有者」という条件でJAXAの募集があって、研究者として採用されました。ただ、当初のJAXAでの仕事は、どちらかというと力仕事であり、夢見ていたいかにも研究所というような環境とは違いました。そこで趣味と仕事を分けようと考え、当初の憧れであった航空機設計者ではなく、計測の専門家としてJAXAに関わっていこうと決意しました。それが今でも研究している感圧塗料の開発につながりました。その後、JAXAではなく大学という新しい環境で、研究だけでなく教育にも携わりたいという思いが募ってきて、その中でも、世界の最前線に挑戦しながら学生を育てる、本学の「研究第一主義」という学是に共感して、本学に居を構えることにしました。

―航空系志望の高校生に求める学問に対する姿勢は

 夢に向かって貪欲に前進する姿勢を持ってほしいと思います。それと同時に、そもそも航空技術は緻密な研究を積み上げられた末にできているので、やはり最初はこれらの緻密な学問を一歩ずつ学んでほしいですね。また、好奇心とチャレンジ精神は不可欠だと思います。

―高校生にメッセージを

 前述の通り、私は偶然募集がかかっていた枠でJAXAに就職しました。またNASAの技術者にJAXAを案内する機会が巡り、その縁で憧れのNASAに留学することができました。これらは得ようとして得られる縁ではないですよね。だからこそ、そういう縁に巡り合ったら、迷わず飛びついてほしいと思います。また、今現在は三菱航空機が小型旅客機で世界に挑戦していたり、JAXAやNASAが火星でヘリコプターを飛ばす試みを行っていたりと、航空宇宙関連は「熱い」話題で満ち溢れています。ぜひこれらの話題に関心をもって接してほしいと思います。
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