英語科教員 岡田毅教授に聞く 求められる英語力とは ~「日常を受信・発信する力を」~
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現行の大学入試センター試験の後継として、2020年度から始まる大学入学共通テスト。英語の4技能を適切に評価するため、大学入学共通テストの成績と合わせて、民間の英語の資格・検定試験が活用される予定だった。
しかし、大学入学共通テストの英語民間試験の活用について、萩生田光一文部科学相は先月1日、20年度からの実施を見送ることを発表した。今後は、民間試験の活用の是非を含め、約1年をかけて検討し、24年度からの実施を目指す。
揺れる英語入試。受験生の不安は高まる。そこで今回は、予定されていた改革のポイントと、これからの大学生が求められる英語力について、本学国際文化研究科の岡田毅教授に話を伺った。
―民間試験を導入する意図とは
現在、日本人の英語力は世界的にみてとても低くなっており、これを見過ごしてはおけなくなったということですね。現行の試験制度では、日本の高校生、大学生の英語力向上につながらなかったという反省が文部科学省の内部にあるのだと思います。ただ、「改革」といっても、今まで何もしていなかったわけではなく、何十年にもわたって、常に「よりよくしよう」ということは続けていたのです。
しかし、世界のニーズの変化によって、今までの入試のやり方では、日本人に求められる英語力と、実際に日本人が持っている英語力に差ができはじめました。文部科学省はこれをどうにかしなければならないと考えたということだと思います。
―今回予定されていた英語に関する大学入試改革について、どのような印象を抱いているか
私としては、この機会を逃してしまうと、世界の中で相当な遅れをとってしまうと思います。言葉というものは一つのツールです。日本の「いいもの」を発信し、世界の「いいもの」を受け取るという、当たり前のことをするためのツールとして、言語、特に世界共用語の位置を占めている英語の力をしっかり持っていないと、世界からも遅れをとることになりますし、日本そのものが内部で縮んでいってしまうことがあるかもしれません。
―複数の民間試験が活用される予定だが、試験による公平性という面ではどうか
一般的に、英語の資格・検定試験は、それぞれ違う目的や基準があって作られています。これらの試験を受けることにより、自分の英語力が社会の中でどのくらいの位置にあるのかを知ることができます。従って、これらの試験を1点刻みの世界である大学入試と同じ次元で扱い、さらに異なる性格の試験を同じように扱うことには無理があると思います。だからと言って、民間試験の活用をやめるのではなく、「なぜこのアイデアが出たのか」を考えて、外部の試験をどのように活用するかなどについて、よりよい方向に向かうための議論が必要だと感じています。
―共通テストばかりが注目を浴びがちだが、個別試験の改革の必要性は
私の持論ですが、本学の英語教育をよりよくできないのであれば、我が国全体の英語教育の改革などについて語ることはできないと思っています。そういった意味で、本学の2次試験の変革は極めて重要であり、このことは他の大学においても同じであると思います。つまり、「どういった英語力を持った大学生に入学してほしいのか」ということを、一層色濃く入試問題に反映していくことが求められます。
―大学生としてどのような英語力を身に付けていくべきか
大学で学ぶ英語は特殊なものではありません。学生として普段やっている言語活動を英語でもできる、という能力を目指せばいいと思います。勉強の内容は当然でしょうが、例えばサークル活動やアルバイトなどについても、英語で発信でき、かつ受信できるようになることが大切だと考えます。本学の学生であれば、1・2年生のうちに行われる全学教育の授業で、日本語でも英語でも一定のレベルで受信・発信ができるようになることが目標として挙げられると思います。これらの目標を達成するために、本学ではTOEFLに注目した教育を展開している講義も増やしていきます。
また、週に1回や2回の講義を受けるだけで十分な英語力がつくわけではありません。1日30分でもいいので、時間を見つけて、自主的に学習することが大切です。さらに、長期休みの期間を有効に利用して、海外に留学に行ってみたり、資格・検定試験を受験したりしてみましょう。明確に設定した目標をクリアすることによる達成感も得られるはずです。
―英語力を向上させるため、講義をするうえで工夫している点はあるか
学生同士がコラボレーションして学び合い、お互いに切磋琢磨できるような講義になるよう、工夫しています。学生自身が英語に巻き込まれてほしいと思っており、英語というものを、特に大学生として身近に感じながら学習できるような環境づくりを心がけています。
―本学を志望している高校生に一言
本学は研究型大学ですから、入学後にその学問の世界で伸び伸びやっていけるような英語力、つまり「学術目的の英語」(EAP)が目標です。その前提となる「一般的な学術目的の英語」(EGAP)につながるような基礎力を身につけている学生に入学してほしいと思っています。現段階で、普段やっていることを少しでも英語で受信・発信ができる人は、大学1・2年生のうちにさらに英語力を伸ばしていけると思います。そういった潜在的な可能性を持っている人にぜひ入学してほしいですね。
しかし、大学入学共通テストの英語民間試験の活用について、萩生田光一文部科学相は先月1日、20年度からの実施を見送ることを発表した。今後は、民間試験の活用の是非を含め、約1年をかけて検討し、24年度からの実施を目指す。
揺れる英語入試。受験生の不安は高まる。そこで今回は、予定されていた改革のポイントと、これからの大学生が求められる英語力について、本学国際文化研究科の岡田毅教授に話を伺った。
―民間試験を導入する意図とは
現在、日本人の英語力は世界的にみてとても低くなっており、これを見過ごしてはおけなくなったということですね。現行の試験制度では、日本の高校生、大学生の英語力向上につながらなかったという反省が文部科学省の内部にあるのだと思います。ただ、「改革」といっても、今まで何もしていなかったわけではなく、何十年にもわたって、常に「よりよくしよう」ということは続けていたのです。
しかし、世界のニーズの変化によって、今までの入試のやり方では、日本人に求められる英語力と、実際に日本人が持っている英語力に差ができはじめました。文部科学省はこれをどうにかしなければならないと考えたということだと思います。
―今回予定されていた英語に関する大学入試改革について、どのような印象を抱いているか
私としては、この機会を逃してしまうと、世界の中で相当な遅れをとってしまうと思います。言葉というものは一つのツールです。日本の「いいもの」を発信し、世界の「いいもの」を受け取るという、当たり前のことをするためのツールとして、言語、特に世界共用語の位置を占めている英語の力をしっかり持っていないと、世界からも遅れをとることになりますし、日本そのものが内部で縮んでいってしまうことがあるかもしれません。
―複数の民間試験が活用される予定だが、試験による公平性という面ではどうか
一般的に、英語の資格・検定試験は、それぞれ違う目的や基準があって作られています。これらの試験を受けることにより、自分の英語力が社会の中でどのくらいの位置にあるのかを知ることができます。従って、これらの試験を1点刻みの世界である大学入試と同じ次元で扱い、さらに異なる性格の試験を同じように扱うことには無理があると思います。だからと言って、民間試験の活用をやめるのではなく、「なぜこのアイデアが出たのか」を考えて、外部の試験をどのように活用するかなどについて、よりよい方向に向かうための議論が必要だと感じています。
―共通テストばかりが注目を浴びがちだが、個別試験の改革の必要性は
私の持論ですが、本学の英語教育をよりよくできないのであれば、我が国全体の英語教育の改革などについて語ることはできないと思っています。そういった意味で、本学の2次試験の変革は極めて重要であり、このことは他の大学においても同じであると思います。つまり、「どういった英語力を持った大学生に入学してほしいのか」ということを、一層色濃く入試問題に反映していくことが求められます。
―大学生としてどのような英語力を身に付けていくべきか
大学で学ぶ英語は特殊なものではありません。学生として普段やっている言語活動を英語でもできる、という能力を目指せばいいと思います。勉強の内容は当然でしょうが、例えばサークル活動やアルバイトなどについても、英語で発信でき、かつ受信できるようになることが大切だと考えます。本学の学生であれば、1・2年生のうちに行われる全学教育の授業で、日本語でも英語でも一定のレベルで受信・発信ができるようになることが目標として挙げられると思います。これらの目標を達成するために、本学ではTOEFLに注目した教育を展開している講義も増やしていきます。
また、週に1回や2回の講義を受けるだけで十分な英語力がつくわけではありません。1日30分でもいいので、時間を見つけて、自主的に学習することが大切です。さらに、長期休みの期間を有効に利用して、海外に留学に行ってみたり、資格・検定試験を受験したりしてみましょう。明確に設定した目標をクリアすることによる達成感も得られるはずです。
―英語力を向上させるため、講義をするうえで工夫している点はあるか
学生同士がコラボレーションして学び合い、お互いに切磋琢磨できるような講義になるよう、工夫しています。学生自身が英語に巻き込まれてほしいと思っており、英語というものを、特に大学生として身近に感じながら学習できるような環境づくりを心がけています。
―本学を志望している高校生に一言
本学は研究型大学ですから、入学後にその学問の世界で伸び伸びやっていけるような英語力、つまり「学術目的の英語」(EAP)が目標です。その前提となる「一般的な学術目的の英語」(EGAP)につながるような基礎力を身につけている学生に入学してほしいと思っています。現段階で、普段やっていることを少しでも英語で受信・発信ができる人は、大学1・2年生のうちにさらに英語力を伸ばしていけると思います。そういった潜在的な可能性を持っている人にぜひ入学してほしいですね。