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【書評】『赤毛のアン』モンゴメリ 新潮文庫

 今回紹介するのは、誰もが一度はそのタイトルを耳にしたことがあるだろう名作『赤毛のアン』である。カナダの女性小説家モンゴメリによる長編小説「アン・シリーズ」の第一作目で、著者の代表作だ。



 主人公のアンは、痩せた身体とそばかすだらけの顔がコンプレックス。幼いころに両親を亡くし、引き取られた先の家では歓迎されず、赤い髪をしていることから学校では「にんじん」とからかわれる。決して順風満帆とはいえない生活を送ってきたアンだが、この本を読み終えた後に「アンは不幸だった」と感じる読者は少ないのではないか。

 本書を通して描かれているテーマは「成長」だ。腹心の友やライバルとの出会い、名門大学への進学、家族の死。私たちにとっても身近な、必ず経験するであろう出来事を、時に失敗し、時に悲観的になりながらも、自分の欠点を受け入れ、前向きな姿勢と豊かな想像力で乗り越えていく姿に勇気をもらう人も少なくないだろう。

 最初はアンを歓迎していなかった周囲の人々だが、持ち前の素直さや、豊かな感情表現で一喜一憂するアンを見て、次第に愛情をもって接するようになる。また、アンに愛着を持つようになるのは読者も例外ではない。本書で多く見られる聖書を用いた大げさなまでの言い回しは、読んでいて思わずくすっと笑ってしまうだろう。どんな時でも希望を持ち続けるアンの姿勢は、周囲の人々をも前向きな気持ちにしてくれるのだ。

 児童文学に分類されることも多い本書であるが、大学受験や進学といったさまざまな経験した今読むことでまた違った感想を持つことができるだろう。どんなに大変なことが起きても、つらいことがあっても、前向きに信じていればきっと明るい未来は訪れる。この春に進学や進級を迎えた皆さんに、一人の女の子の成長の物語をぜひ読んでいただきたい。
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