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【教員インタビュー】大学院経済学研究科 小田中直樹教授 ~新著で語る感染症と社会~

 本学大学院経済学研究科教授である小田中直樹先生の著書『感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか―世界史のなかの病原体』が7月29日に出版された。歴史学の視点から感染症と社会の関わりを見つめた本書の内容を踏まえ、新型コロナウイルスの特徴や大学のあり方について小田中教授に伺った。



―普段の研究内容は

 経済学研究科では社会思想史が担当だけど、ここ10年くらいは第二次世界大戦後のフランスの団地の歴史を研究しています。フランスでは1950年頃から高度経済成長が始まって、都市化が進んだ。農村部から集まった人々や移民に住宅を供給するために団地が作られたけど、国民性からかフランス人は集合住宅を好まないから、異なる文化をもつ移民が団地に残ってゲットー(居住区)を形成して、周りのフランス人と摩擦を起こしてしまう。この文化摩擦に端を発する都市問題について、どういったメカニズムで発生するのか、どのような都市政策が採られてきたかなどについて研究しているところです。

 インドネシアとのEPA(経済連携協定)締結のように、日本も外国人受け入れの方向にかじが切られている。僕たちも似たような問題に直面するかもしれないよね。


―新しい著書の概要は

 この本では、ペスト、天然痘、コレラ、インフルエンザの主に四つの事例を取り上げて、感染症と社会の関係の歴史について考えてみました。この関係には二つの側面がある。一つ目は感染症が発生して社会が変わるという面で、二つ目は社会のあり方が感染症のあり方に影響を与えるという面です。

 感染症は、社会との関係が非常に強い病気でしょ。感染することで社会的に疎外されたり、感染した本人も落ち込んだりする。こういうことは他の病気ではなかなか起こらないことだよね。社会にインパクトを与える病気であるということを念頭に置かないと、さらなる感染の拡大を招くこともありうるし。


―感染症が社会に与えるインパクトとは

 感染症の種類による違いが印象深いね。たとえば消化器系と呼吸器系の感染症は、その性格を反映して、社会との関わりが異なる。消化器系の感染症だったコレラが流行したときには、都市化は止まらない一方で清潔な街を作る都市計画が生まれた。呼吸器系だったインフルエンザの場合は、都市計画はそこまで変わらなかったけど、都市化には歯止めがかかった。新型コロナは呼吸器系で、やはりリモートワークや地方移住なんて言葉が目立つよね。


―なぜ新型コロナウイルスは脅威とみなされるのか

 有効な薬剤のない感染症が日本で大規模に流行したのは、かなり久しぶりのことだからかな。日本で感染爆発が生じたのは、全世界で約百万人の死者を出した68年頃のいわゆる香港風邪以来。実はその頃までは、香港風邪やソ連風邪のようなパンデミックは10年おきぐらいで発生していて、珍しくもなかった。健康で清潔で、パンデミックのない半世紀を過ごした日本人が、過剰ともとれる反応をしてしまうのは、当然かもしれないよね。

 今回この本を書くにあたって、似たテーマで本を出版した池上彰さんと対談する機会があったけど、池上さんは香港風邪のパンデミックを経験している。当時の人々の反応について、「騒がなかったねえ、もっとすごい病気があったんだよ」と言われて目からうろこだったな。それは結核。この頃、人が感染症で死ぬのは今よりずっと身近なことだったんだね。

 これはつまり、社会のあり方が感染症のあり方を変えたということかな。日本における結核は、サナトリウムで療養していた文化人のように、病人がある種の聖なるものとみなされもしたけど、今新型コロナに感染すると、一種の加害者としてスティグマ(烙印)を負うことになる。同じ呼吸器系の感染症でも、人々の反応はまるで違う。


―今後社会はどのように変わるのか

 当たり前だけど、変わることもあれば、変わらないこともあるんじゃないか。国際的なサプライチェーンが切れて、国内でフルセット型の生産が行われるようになるといわれているけれど、衣料品部門では人件費を考えると現実的ではないから、国際的なサプライチェーンは戻るかもしれない。これとは逆に、食料品やワクチンのように、人間の命に必要不可欠なものは国内回帰が始まるかもしれない。できることとできないことを見極めないといけないよね。


―大学はどのように変わるのか

 これにも、変わることと変わらないことがあるだろうね。資料配布や課題回収はオンラインでもできるけど、「場」を共有せずに伝えられることは対面授業に比べれば少ないから、授業は対面に戻っていくでしょう。経済学部でも、3・4年生のゼミや大学院の授業は対面に戻そうとしているし、全学教育でも体育は対面での実施が決まっている。

 オンラインではよく質問がくるという意見もあるけど、それは、これまで教員が怠慢だっただけだと思う。対面の大人数講義でも、ミニットペーパーを配れば学生は質問や感想を書いてくれるし、当てればちゃんと答えてくれる。図やイラストは紙じゃないと表現しづらいものもある。大講義室で発言を促しても、大人しい学生たちが答えないのは当たり前とも言えるし。消極的でけしからんというのは間違いだよ。オンラインはあくまで、対面ではできないことに生かしたいね。他大学の授業は、オンラインでないと気軽には受けられない。本学でも実際に、海外の先生にセミナーを開いてもらったりもしている。オンラインでしかできないことを試しつつ、対面をいかにバージョンアップするかを考える時期なんじゃない?

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