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【応援号2021】編集長、代わりに落ちる―群馬・猿ヶ京で合格祈願 ~受験生のため、いざバンジー~

 「落ちる」ということを経験したことがあるだろうか。地上で生活している限り、「滑る」ことや「転ぶ」ことはあっても、宙に放り出されることなど滅多にない。試験にしても、「落ちる」というと、「滑る」や「転ぶ」に比べて致命的な響きを伴う。


 受験生に、命がけの綱渡りなんてさせられない。未来の後輩たちへのお節介から、プロジェクト「代わりに落ちてきた」が始動した。受験生のために一身を投げ、かつ生還することなど可能なのだろうか。3週間にわたる議論の末、報道部が下した決断は「バンジー・ジャンプ」。起源は、バヌアツ共和国・ペンテコスト島に伝わるイニシエーションにまでさかのぼる。


 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を避けるため、報道部から送り出せるジャンパーは一人だけ。多くの部員が勇んで名乗りを上げるも、今年度成人を迎えた筆者が挑戦権を獲得。涙を飲んだ部員の思いを胸に、単身仙台を発った。


 令和3年1月初旬某日の正午、群馬県・猿ヶ京に到着。集合地点にて受付を済ませると早速、参加同意書への署名を促される。「このアクティビティを行うと決心したことは、私がヒーローである、ということの証明でもあります」「リスクを冒さずに報いはありません」「賠償請求を行うことは、ボクシングジムに対し、入会しリングに上がった後、リングで殴られたから賠償請求を行う、ということと同じです」。リスクを念押しする文言が並び、思わず唾を飲む。


 全国の受験生に代わり署名を済ませ、安全帯の装着と体重の測定に進んだ。テキパキとした手つきのスタッフに安全帯を付けてもらい、体重計に乗る。右の手の甲にマジックペンで体重を描かれたとき、安全帯が、自身の逃走を阻む拘束具にもなることに気付く。


 安全帯の装着の次は、ジャンプの説明に移る。大まかな流れは次のようだった。まず、スタッフのカウントダウンに従って跳び、ロープが伸び切った後、数度のスイングが収まるのを待つ。スイングの後、スタッフが下ろすウインチのフックを装着し、両手で頭上に「丸」を作る。「丸」を確認したスタッフに引き上げてもらい、これにて無事ジャンプ終了となる。スタッフに促されるままに、両手で「丸」を作る練習をし、いよいよジャンプ地点である赤谷水管橋に移動する。


 赤谷水管橋は62メートルの高さを誇り、木々で覆われた渓谷に架かる。真っ赤に塗られた橋の上から谷間を眺めると、青い水面が、木々に積もった白い雪に良く映え、吸い込まれてしまいそうな気がした。


 橋の中央にあるジャンプエリアには、数名のスタッフが待機していた。慣れた手つきで命綱を装着され、いよいよジャンプ前の最終確認へ。進退窮まった心地で、再び頭上に「丸」を作り、スタッフに尋ねる。


「今まで事故とかありませんでしたよね?」


「まだないですね」


 スタッフの一人があっけらかんと答え、ジャンプ台に筆者を導く。


 落ち着け、いや、着いちゃダメだ。筆者の顔が、水面さながら真っ青に染まる。ジャンプ台のへりをつま先で必死に握りしめる筆者に、スタッフが追い打ちをかける。


「もう半歩前に出て下さい」


 あの、地面、もうないんですけど。スタッフにじりじりと押され、もはや地面と接点を保つのはかかとだけ。


「3、2、1、バンジー‼」


 スタッフの手が軽く背中を押した。カウントダウンと絶叫が谷間にこだまして――私は、ファースト・ペンギンになった。


 帰路に就く筆者の手には、勇気あるジャンパーを讃える認定書が握られていた。「勇気を持って恐怖に立ち向かい、見事に克服しました。今日の達成感は、必ず今後のあなたの人生における様々な問題に立ち向かう自信と勇気を与えてくれるでしょう。あなたのチャレンジ精神の大きな一歩を讃え、ここに認定いたします」。先刻の悲鳴とは打って変わって、朗々と認定書の文面を読み上げる。浮かれに浮かれ、賛辞の言葉を反すうしていると、一つの疑念が湧いてきた。「落ちる」ことではなく、「一歩踏み出す」ことこそ、賞賛されるべき偉業なのではないだろうか。自身の背を軽く押した、スタッフの手の感触がふとよみがえる。私は本当に、自分自身の力で「跳んだ」と言えるのだろうか――。


 一つ確かなことは、今この記事を読んでいる受験生の皆さんはすでに、自身の力で一歩を踏み出した勇気あるジャンパーであるということだ。皆さんの一歩が、偉大な跳躍となることを切に願う。

応援号 4722463185292339271

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