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【ニュース】医学系研究科・コロナ重症化防ぐ飲み薬を開発 ~2年後の実用化目指す~

 本学医学系研究科の張替秀郎(はりがえひでお)教授と宮田敏男教授らからなる研究グループが、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ効果が期待できる飲み薬を開発した。4月28日のプレスリリースで発表され、治験などを経て早ければ2年後の実用化を目指すとしている。数少ない新型コロナの治療薬であるという点や、飲み薬であるという点が画期的なこの新薬について、張替教授に話を伺った。



血栓を溶かして肺炎の発症防ぐ


 血液には、血液中にできた血栓を溶かす線溶という作用がある。しかし新型コロナで重症化する人の体内には、「PAI‐1」と呼ばれる線溶を阻害する物質が大量に生じる。これにより肺血管内に微小血栓が発生し、肺炎の発症につながる。り患者の大多数は軽症か無症状であるが、一部の患者はこのように肺炎を患うなどして重症化する。

 今回研究グループが開発した治療薬「TM5614」は、PAI‐1を阻害し、線溶を再度促進させる効果を持つ。これにより肺炎の発症を阻止するなどの効果が確認されている。そのため軽症段階から経口服薬することで、重症化を防ぐ効果が期待されている。


治験の段階進む 国内最大の規模


 研究グループは昨年8月から今年3月にかけて、少数の新型コロナ患者を対象に安全性や有効性を確認する2段階目の治験を行った。実施した全30例で死亡者は出ず、人工呼吸器の着用を必要とした患者もいなかった。安全性も確認されたため、今月から行う次のステップの治験ではさらに治験数を増やしプラセボ(偽薬)との比較も行うことで、有効性をさらに検証する。来年3月までを予定しており、国内最大規模の治験体制で実施する。

 順調に進んでいる治験であるが、張替教授は新型コロナならではの苦労も多いと話す。「新型コロナには感染の波がある。どこにどれだけ治験に協力してくれる患者さんがいるか、予測ができない。迅速さも求められる一方、隔離病室という特殊な環境で説明し同意を得て、検査をする必要もある。一般の治験に比べて、はるかに大変だ」


15年の積み重ね


 迅速に開発されたようにみえるTM5614には、長い開発の経緯がある。この薬はもともと血液がんの治療のため、15年前に宮田教授が開発を始めたものだった。長期にわたる非臨床試験(動物などで行う試験)を経て、ヒトで安全性などを確認する治験も実施した。血液がんでの治験は張替教授が実施し、安全性と有効性を確認した。

 その最中に、新型コロナが世界的に流行。PAI‐1がカギとなることが明らかとなり、TM5614が新型コロナ治療に有効である可能性が浮上したことで、研究が始まった


「治療薬」の開発 日本一歩リード


 今後1年間の治験で大きな効果が確認されれば、その後は製造販売を担う製薬会社との契約となる。製薬会社は治験の結果を踏まえ、国の承認を経て製造販売まで、およそ1年をかけて行う。

 現在日本ではワクチン接種が始まり、予防体制は着々と整いつつある。しかし新型コロナに特化した発症後の重症化を防ぐ薬は今のところほとんどなく、新型コロナ「治療薬」という点でこの薬の意義は非常に大きいと、張替教授は説明する。

 TM5614の画期的な点はこれだけに留まらない。点滴が中心となっている現在の治療手段に対し、TM5614は飲み薬として開発されている。軽症段階から一般の病院で処方することで重症者を減らし、医療崩壊を防ぐことができると期待されている。

 日本で一から全て開発しているということも大きな特徴の一つだ。ワクチン開発では世界に後れを取っている日本であるが、この分野では日本が一歩リードしている。張替教授は「日本で開発した薬を世界に出せればと考えている」と強調する。


感染広める若者 「自覚を改めて」


 先月12日には本県に適用されていたまん延防止等重点措置が解除され、本学BCP(新型コロナ行動指針)もレベル2に引き下げられた。制限は徐々に緩和されているが、張替教授はコロナ禍での生活様式の徹底を改めて訴える。「三密の防止、不要不急の外出の自粛などは、今まで通り大切。ワクチン接種が始まっているとはいえ、ここで油断しては収束につながらない」。その上で若年者は重症化のリスクこそ低いものの、感染の拡大に大きくかかわっていると指摘。「自分が感染を広げているかもしれないという自覚を改めて持ってほしい」と話した。

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