【一言居士】 ー2021年11月ー おみくじから…
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おみくじを引いた。「【言】白圭の欠けたるはなお磨くべし。この言の欠けたるはむべからず」欠けた玉は磨けばよいが、口に出してしまった言葉はどうにもならない。大吉のうれしさを耳の痛さが上回る。なぜ私は叱られているのか▼本学文学研究科の矢田尚子先生に、出典について聞いた。中国最古の詩集『詩経』の、「抑」という詩の一節。春秋時代に衛の武公が、自らを戒めるために作ったものだそうだ。▼「小さな文字で書かれているところを見てください」ページ一面に並ぶ漢字。詩の原文に半分の大きさ、の字でによる注釈が続く。「例えばこの文は、この漢字が『欠ける』という意味だよ、と説明しています。二千年前の中国の人も、私たちと同じようなことがわからないんです。面白いですよね」▼時空を超えて人々は、大なり小なり同じ悩みを抱えるもの。歴史や文学、語り継がれる物語は、先人が作り上げた知と経験の地図。これを生かし、新たな地を拓けないだろうか。おみくじは、「言」が見えるように机の前の壁に貼りつけた。
(文責:田中)