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【連載】大学のウラ側のぞいてみたら 第2回 東北大学植物園

 「それが『自然』だから、積極的には関われないんですよね。そこが難しいところなんです」。大山幹成助教と津久井孝博技術専門員は顔を見合わせて苦笑する。そこには、自然との関わり方を日々模索し、試行錯誤する人の姿があった。


 連載企画「大学のウラ側のぞいてみたら」。第2回は、本学植物園に潜入した。(増田千夏)


♢ ♢ ♢


 そもそもなぜ青葉山に植物園があるのか。それは歴史的な経緯に理由がある。


本学理学部青葉山植物園の川内出口側のゲート。
現在、青葉山内の園路および青葉山ゲートは
閉鎖されている

 青葉山は、かつて伊達政宗によって築城が始められた仙台城があった。そこは3方向を川、湿地、渓谷に囲まれた自然の要害。しかし一方向だけ山の尾根に沿って敵が侵入できるという弱点があった。そのため、仙台藩の厳重な監視下に置かれ、許可なく人が入ることが禁止された。明治維新以後は陸軍に引き継がれ、同様に一般の人が入ることはなかった。それを第二次世界大戦後に本学が引き継いだのだ。



 「奇跡的ですよね。人が入っていたら成立しなかった森が400年残っているんです」と大山助教。そうして成立したモミ林は国指定天然記念物として登録されている。


大山幹成助教と仙台城二の丸のスギ

 天然記念物を擁する本学の植物園。しかしだからこその難しさもある。



 津久井技術専門員は普段、植栽の管理や観察路の整備を担当している。 



 周囲が天然記念物である以上、整備をするときも永久に残るものは使えない。「だから観察路の階段とかは木材を使うんですけど、当然腐るから直さなきゃなんですよね」と津久井技術専門員は苦労を話す。



 倒木も植物園を維持する際の問題の一つだ。「最近だと災害や、木の病気で倒れてしまうことが多いです。ただ我々は倒れそうだからといって予防はしない。最初から切っちゃえば楽なんですけどね」と大山助教は笑う。



 植物園の自然状態を維持しながら管理するため、月に一度植物園に所属する教員、技術職員が集まって会議が開かれる。「研究者目線、現場の目線、お客様の目線で意見を出し合って、一緒になってこの特殊な植物園を運営しています。」



 日々知恵を出し合いながら、自然と向き合っている二人。しかし、時代の流れがここにも影響を及ぼし始めている。「地球温暖化です。最近は雨の降り方も変わってきていますし、病害虫も増えています。このままだと、さまざまな木が枯れてしまいますが、それも自然の成り行きなんですよね…」と大山助教は顔をしかめる。津久井技術専門員も「ここは街に近い植物園ですから、多くの市民に愛されていますが、やっぱり自然の負の面って受け入れがたいんですよね。でもそれが自然なんです。それをどうやって市民の方に理解してもらうのかも問題です」と話す。



 自然の在り方に配慮しながら、自然を守り市民に公開するという難題が、植物園にはいつも付きまとう。二人は終始悩まし気に、しかし愛おしそうに自然について語っていた。

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