報道部員の受験体験記~入試はチョコほど甘くない~
大学入学共通テストを終えた帰りの電車内で、私は泣いていた。帰宅後のお通夜と化した家の空気は忘れられない。
高校3年間は、誇張なしで勉強しかしなかった。私の母校は私立の進学校。県内でその名を知らぬ高校生はいないと言うほど、鬼のような授業カリキュラムで有名であった。何度ボイコットして、海に向かって叫びに行こうと思ったことか。
私の受験期のモチベーションの8割は「こんなに勉強して落ちるなんて報われない」という思いである。多くの高校生が輝かしい青春を送っている3年間を犠牲にしているのだ。せめて合格はさせてほしい。
そうして迎えた試験当日。カイロと家族からのメッセージが書かれたキットカットを、制服のポケットに忍ばせて会場に向かう。そして事件は起きた。
1日目の午後、英語の時間。一通り問題を解き終わって時計を見ると、残り時間は5分ほど。見直しを始めた私は絶望した。マークが一つずつずれている―9問目から。修正は間に合わなかった。
英語の試験が終了した時点で私は泣いていた。それでも涙をこらえながら帰路につく。ポケットに手を入れた私をさらなる悲劇が襲った。キットカットが見る影もなく溶けている。制服やカバン、マフラーはチョコレートまみれだった。
受験期に増やした語彙が頭の中を駆け巡る。泣きっ面に蜂、弱り目にたたり目、傷口に塩を塗る。泣いた。かくして、チョコレートの匂いを振りまきながら号泣する女子高生が生まれたのである。
東北大学に通う今ではいい思い出だ。私が受験生に言えるのは一つ、キットカットとカイロを同じポケットに入れてはいけない。 (木村舞乃)