【ネタ記事】大学入試問題 力ずくで再現 本当に解けるか
入学試験問題の中には、現実ではあり得ない設定が出題されることがある。その問題を可能な限り再現して解くと、どのような結果が生まれるのか。我々は自らのパワーをもって確かめることにした。
最初に取り組んだ科目は現代文(小説)だ。自分の担当する役になりきり文章を音読する。演技をした自身の心情に基づいて問題を解き進めた。
今回の文章は、梨木香歩作『雪と珊瑚と』の一節。シングルマザーの主人公・珊瑚はカフェの開業を決意。物件探しの際にオーナーの奥さんが家賃を値下げしてくれたが、珊瑚はふびんな女に対する同情による幸せな夫婦からの施しだと捉えた。珊瑚の話を聞いた知人のくららは、苦しい現状の中では人の好意は素直に受け取るべきだと珊瑚に伝え、珊瑚は葛藤しつつも前向きな気持ちになるというあらすじだ。
我々は役を演じつつ何とか解答を作り上げたが、実際の解答例(河合塾仙台校作成)と比べると、内容に大きなずれが生じた。例えば、解答例では「他人からの同情に素直になれない自身への過度な嫌悪が珊瑚の中で現れたこと」を、くららは「アレルギー反応」と例えて言ったとした。しかし実際に登場人物になりきった我々の解答は「他人からの同情に対し感謝よりも強い拒否反応を示したこと」という正反対の内容だった。
次は数学Ⅱ・B(数列)の問題に挑戦。自宅を原点とする数直線を考え、歩行者と自転車をその数直線上を動く点とみなす。歩行者は分速1で自宅を出発し、その2分後に自転車が分速2で追いかける。自転車が歩行者に追いつくと両者が1分間停止した後、歩行者は再び歩き始め、自転車は自宅へUターン。再び分速2で歩行者を追いかけるという流れを繰り返す。自転車は、自宅と歩行者の間をひたすら往復するという奇妙な動きをする設定だ。
歩く部員Uを自転車で追いかける部員N |
歩行者が300歩くまでに自転車が歩行者に追いつく回数と、最後に追いついた時点で歩行者が自宅を出発してからたった時間を問う問題を解くため、我々は河川敷に場所を移した。分速を秒速に直した点と距離単位をメートルに定めた点を除き、問題と設定を全て同じにした上で実際に歩き、自転車を走らせることにした。実測の結果、自転車が歩行者に追いつく回数は正解したが、時間は正答と比べて約100分ずれていた。
入試問題を再現し、自らの「パワー」をもって解いてみて、分かったことはただ一つ。問題用紙の中の世界と、現実世界は別次元であるということだけだ。(前川銀平)