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【特別インタビュー】第59次南極観測隊員 山田恭平さん 南極で約1年 観測調査 高校からの夢叶える

 「人生の岐路に立ったときは、南極に一番近い道を選びました」。本学理学部を経て本学大学院理学研究科博士課程を卒業後、国立極地研究所の特任研究員として第59次南極観測隊員に参加した山田恭平さん。現在は国立環境研究所の特別研究員として研究活動をする山田さんの、南極を目指した15年間と、帰国後の研究活動について聞いた。(聞き手は小滝真悠)


やまだ・きょうへい
1988年生まれ。栃木県出身。2011年本学理学部卒業。
16年本学大学院理学研究科地球物理学専攻博士過程卒業後、
国立極地研究所に3年間所属。
在籍中に第59次南極地域観測隊として現地調査へ。
その後、長野県環境保全研究所を経て、現職
(写真は全て提供)



―高校時代に南極へ行くことを決意した山田さんの、東北大を選んだ決め手は
 南極に行くには研究者になるのが一番いいという話を聞いて、東北大の地球物理学科なら南極のことも勉強できるだろうと考えて入学を決めました。大学時代は、雲や水蒸気から出ている赤外線による温室効果について研究をしていました。


―南極に行くという意思を貫き通した原動力とは
 原動力という言い方だと一生懸命に短距離走をする印象があるのですが、私は徹夜すらできないタイプなので、大学受験や学科選択などの際に、今できる範囲で一番南極に近い選択をするようにしていました。ずっとエンジンがかかっているというよりは、帆船―ヨットのような感じで、風を受けて上手いこと船を操って行ったという感じです。

第59次南極観測隊員として、
2017年から19年まで現地で調査していた



―本学大学院を卒業後、南極に行くという夢を果たしたが、どのような研究を
 「一般観測研究」という枠で気象水象、特に南極の強風現象を対象にしていました。南極では秒速40メートルもの風が吹くので、大陸上に自動気象観測装置を設置したり、ラジオゾンデ(注)観測をしたりしてデータを取りました。計算よりは観測行為がメインでした。60次南極観測隊で出た欠員補充のために駆り出されたので、当初の予定より長く屋外で活動することになりました。合計すると4分の1か5分の1は南極大陸の内陸部で調査していました。


―昭和基地のある東オングル島と南極大陸それぞれの研究環境は
 大陸上では標高3000メートルを越える場所もあります。私が春に作業していたのは標高3400メートルの地点でしたが、マイナス60度を下回るほどでした。数カ月間も雪上車の中で行動するのは大変でしたね。お風呂にも入れないので。基地の中は暖房がしっかり効いていてとても快適でしたが、周辺での屋外作業中にブリザードが吹いてきて、意識が遠のいていく経験もしました。向こうで生活していると段々「大変」っていうことがわからなくなって、今はもう「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という感じです。


―南極生活での癒しは
 「キャロム」という台に穴がないビリヤードですね。基地には酒や漫画などもあったのですが、私はキャロムが一番息抜きになりました。日本ではプレーする場がほとんどないので恋しいですね。北極での研究に少し参加したときも、滞在先に普通のビリヤード台があったので遊んでいました。

山田さんが乗っていた雪上車・SM100



―南極での活動を終え、帰国した直後の心境は
 「やりたいようにやる」という意思を貫けたので、過酷だったけど行けてよかったと感じました。でも、人生の指針だったものが一つなくなった喪失感もありました。
―国立環境研究所に至るまで、どのような研究活動を
 基本的に、コンピュータ上での計算結果と実際の観測結果を照らし合わせて研究をしています。国立極地研究所では南極の強風現象、長野県環境保全研究所では地形ごとの雨の降り方の違いを研究してきました。現在、国立環境研究所では東京全体の二酸化炭素の排出量などを調べています。


―研究職を目指す本学の学生にメッセージを
 英語能力とコミュニケーション能力と、他人の研究に興味を持つことが大事だと思います。論文は英語で書くし、人との交流も多いので。あとは、金銭的な面でも日本学術振興会などの「研究奨励金」を利用して、研究しやすい環境を整えることも重要ですね。研究職に就くこと自体はそれほど難しくないと感じていますが、より上へと進むためには他の要素を揃えてみてください。
(注)ラジオゾンデ
気球に取り付ける気象観測器のこと
特別インタビュー 6217989085862368170
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