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【受験生応援号2024】「読む」とは 文系理系それぞれの考え

 教科書、参考書、過去問。受験生は「読む」という行為を毎日のように行っている。だが、高校の「読む」と大学の「読む」は同じようでいてどこか異なっている。「読む」とは何か。文系・理系それぞれの先生の信条を聞いた。(鈴木舞優、小滝真悠)


古典籍の読み方 テキスト世界を組み上げる


■古典は「読みたい」というフィルターを何回も抜けてきた

 古典がなぜ今も残り読まれているかというと、書き写されてきたからです。読みたい、自分の手元に置きたい、だから書き写す。優れた作品か否かにかかわらず偶然残った可能性もありますが、それ以上に読みたい人がいたということが大きいです。注釈をつけてまでも読みたい人があるのですから、それなりの面白さがあるのだと思います。


■言葉に即して読む

 古典籍を使った研究においては、とにかく言葉が第一の証拠です。言葉からずれて読むことは基本的にあり得ませんが、大専門家でもやってしまうほど難しいことです。例えば古今和歌集に「都ぞ春の錦」というフレーズがあります。これを「都『は』春の錦」と訳すのは間違っています。言葉に即すなら「都『が』春の錦」です。「は」というのは単純に「ああ、都は春の錦だなあ」という意ですが、「ぞ」だと「他でもない、都が春の錦だったよ」という意になり、両者は全く異なります。ですが常識的な頭で読むと「は」と訳すでしょう。先入観なしに文章を読むことは不可能ですが、先入観と言葉とを合わせて考えることが重要です。


おおき・かずお
東北大学大学院文学研究科教授。
日本語学専攻分野


■「読む」には段階がある

 高校の古典は文意がつかめるという段階です。それだけでも読んで自分の中に入ってきてよかったと思えたなら、読むこととしては成功です。テキストを読んで、自分の中にテキスト世界をくみ上げる、それが楽しければいいと思います。


大木一夫教授の研究対象である古典籍


 ですが「読む」ってもっと段階があるんです。私が一番重視しているのはその先の段階、その作品を「よくできているなあ」と感じるような読みです。文章の構成、表現の仕方など、どこで思うかは作品によって違いますが、上手いなあ、やられたなあと感じた作品を私は面白いと思います。それは教科書に書いている注釈の先まで読んでこそ得られる喜びです。


統計の読み方 データから情報を 情報から知恵を


■データを知恵に 統計学の文法

 統計学においてデータを「読む」目的は明確で、データから情報を読み取ることです。データというのはあるだけでは何も分かりません。そこからどういう情報を取り出すか。それが「読む」ことの基本です。

 ですが情報というのは英語の5W1Hのような、単純な事実だけで、それ以上のことは何も示しません。人間が本当に知りたいのは、その情報から得られる知恵、私たちは何をすべきなのかということです。そのため、読み取った情報から知恵を創り出す必要があります。

 データから情報へ、情報から知恵へというこの過程は、未知の言語を解読し、その意味を解釈するのと似ているかもしれません。


いしがき・つかさ
東北大学大学院経済学研究科准教授。
経営統計学担当(写真は本人提供)


■多義性のない数学用語

 大学の数学の学習でまず行うのは、数学の言葉に慣れるということです。数学は厳密に語れることが前提です。例えば「関数が無限大に発散します」と書くときには、「無限大」とはどういう意味なのかを一般的な言葉よりもかなり厳密に定めなければなりません。もしも、私とあなたで無限大の意味の「読み方」が異なると、論理の積み重ねで構成される数学の世界は破綻してしまいます。このような理由で数学の言葉は一般の言葉とは性質を異にします。


■大学の学問には「哲学」がある

 高校までの問題には明確な答えがあります。ですが大学以降は「そもそもなぜこんなことを考えるのか」と問題自体を疑わなければいけません。「哲学」と言ってもいいかもしれませんね。

 約10年前まで実社会で発生したデータはただあるだけで、活用しようという人はほんの一握りでした。それが昨今のAIブームでがらっと変わり、現在に至ります。高校までの数学は、解くことが目的かもしれません。ですが大学では手段とし、その先の段階まで「読む」ことが非常に重要です。


石垣司准教授の論文

受験生応援号 9037039270373907844
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