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模擬裁判 「別人格」と責任を巡る裁判劇

 本学法学部模擬裁判実行委員会による第72回模擬裁判公演『PersonA 「もう一人の彼」の罪』が11月18日、19日に萩ホールで行われた。



 今回の公演テーマは「別人格による殺人」。別人格をもつ主人公が犯した罪の責任能力の有無に焦点を当てた刑事裁判が舞台となった。



 事件は、予備校に通う浪人生の優が妹の望海をバラバラに殺害したところから始まる。優は親の厳しい教育を受ける中で、強迫性障害や解離性同一性障害といった精神疾患を抱えるようになった。そして望海の発言を契機に、優は彼女を殺害し、残忍な形で死体損壊を行ってしまった。



 物語では、解離性同一性障害による別人格が出現した優の責任能力の有無が争点となる。責任能力とは、物事の善悪を正しく判断し、かつその判断に従って行動する能力のことである。これが認められないと犯罪が成立しないとされる。



 裁判の結果、死体損壊時の人格は優本来の人格との関わりが無く、心神喪失の状態にあったと認められた。そのため死体損壊の罪は認められず、殺人の罪で7年の懲役を受ける判決が下されたのだった。



 本公演で配られるパンフレットには、劇中の裁判の流れや、争点、テーマにまつわる基礎知識が掲載されており、法律に詳しくない観客でも劇中の裁判が理解しやすいようになっている。


◇ ◇ ◇


―今回の公演テーマの概要は

 今回の公演テーマは、「別人格による犯罪」でした。解離性同一性障害に罹患した主人公が妹を殺害してしまいます。『多重人格者による犯罪』という難問に、司法は、社会は、家族はどんな答えを出すのか、そして『本当の自分』とは何かを考えるきっかけになる、そんな公演テーマです。

 (委員会全体コメント)



―公演テーマはどのようにして決まったのか

 私たちは12月から2月にかけて、その代で扱う題材を決定するテーマシンポジウムを行います。委員が関心を持つ事例や社会問題を持ち寄るのですが、その中に「別人格による犯罪」という案がありました。これは責任能力に関する問題で、私たち法学部生としても興味深いものでした。生活保護や誹謗中傷などの他の題材も候補にありましたが、委員全員による投票で、この題材を扱うと決めました。

(3年シナリオ 熊田)



―どのような経緯で判決、結末が決まったのか

 判決は実際の裁判例を基に決定しました。今回扱った裁判例は、一審では本編と同じ懲役 7年を課していますが、その後の控訴審では死体損壊の責任能力を認めて懲役12年を言い渡しています。私たちの団体の理念は「裁判劇を通して法と社会の関わりについて考えるきっかけを提供すること」です。今回、あえて一審での判決を取り扱ったことで、「責任能力」という制度がもつ機能や効果、反対にその問題点についてもお客様に考えていただけたのではないかと感じています。


 また、今回の公演では、解離性同一性障害をもつ主人公が「別人格を捨てるのではなく、それも一つの自分だと受け入れて新たな一歩を踏み出す」という結末になっています。このエ ンディングは、障害を抱える人だけでなくすべての人へ、「どんな自分でも生きていい」と いうメッセージを届けたい、と思って描きました。ただ法律や裁判のことを知っていただく だけでなく、この公演や物語は自分にも当てはまるものだと感じていただけていたら嬉しいです。

(3年シナリオ 佐野)



―模擬裁判を行う意義とは

 私たちは模擬裁判公演を通じて、市民の皆様に法と社会の関わりについて理解を深めていただけることを意義として活動を行っています。また、日常シーンと法廷シーンを交えた公演をお見せすることで、事件と法について学べることだけではなく、今後の生活において同じ環境・障害に悩んでいる人の助けになれるかもしれないことも、模擬裁判を行う意義の一つです。

 (委員会全体コメント)


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