国際化推進の真意探る 国際化は「研究大学のデフォルト」
本学が国際化の推進を図る一方、すべての学生にその意義が浸透しているわけではない。本紙が学部生を対象にアンケート調査を実施したところ、国際化や国際共修ゼミの必要性に疑問を抱く意見が見られた。なぜ国際化は重要なのか。どのように国際化を進め、体制強化計画の達成を目指すのか。本学の副理事(国際交流担当)で本学グローバルラーニングセンター副センター長を務める末松和子教授と、本学教育学研究科を修了し4月に同センターに着任した湊洵菜助手に話を聞いた。(聞き手は上野日菜多)
―研究大学である本学において、なぜ国際化が必要か
末松 研究大学では、世界各国の優秀な人材を迎え入れて最先端の研究を行い、世界各国へ輩出していくという人流が必須です。国際化は、研究大学に必要なものというより「研究大学のデフォルト」として認識しています。
湊 本学の大きな教育理念として「指導的人材の育成」があります。グローバルな協調が当たり前になっている現代の「指導的人材の育成」において、国際化は中核であると考えています。国際共修ゼミは、その入り口になると捉えています。
―体制強化計画「国際共修ゼミの拡充:2倍以上」の実現に向け、課題や必要なことは
末松 留学生の受講者数について、交換留学生に頼ってしまっている状況が課題かなと思います。正規留学生がもう少し履修するようにしたいです。また、国際共修ゼミに対して一歩踏み出せない学生に向けたイベントを開催し、国際交流に関心を持つ学生同士でつながる意義を感じ、そこから国際共修ゼミに関心を持ってもらいたいです。
湊 教育の質を保証する観点で、専門的なカリキュラム・コーディネーターが必要になると思います。
また、学生は、得られる効果に対するシビアな眼を持って機会を取捨選択すると理解しています。特に国際共修に関心の薄い学生に向け、そのラーニングアウトカム、大学生活やキャリアへの好影響を可視化していきたいです。一つ高い視座で見れば、中等教育段階から国際共修に親しみを持ってもらうための取り組みも考えられます。本学は国際共修のリーディング・ユニバーシティとして、中等教育機関に限らず、自治体や企業との連携も図りながら、社会の隅々にその理念と実践を浸透させていきたいと考えています。
―体制強化計画「海外経験比率:学部生100%(国際共修)」とはどのような目標か
末松 これは、国際共修を含む国際的な体験を、全学生に1回はしてもらいたい、という目標です。本当は全員に留学してほしいところですが、資格試験の都合や経済的な事情などから留学に行けない学生もいるので、何らかの形で国際的な活動を体験してほしいということです。
―計画の実現に向けて実施したいことは
末松 これは現在、実際に行っているのですが、留学期間の短期化が挙げられます。交換留学など長期の留学は行ける人が限られているので、短期間で集中して国際的な体験ができるよう、工夫しながらプログラムを開発しています。海外に行く前や渡航中に本学の留学生や現地の学生との国際共修活動を取り入れるなどがその一例です。
湊 国際的な体験の促進における問題としては、経済的な格差に加え、家庭内の文化資本や出身地域による格差も根深いと考えています。経済支援だけでなく、機会や情報、資源への公正なアクセシビリティを保障する、層の厚い支援をしていきたいです。
―「ゲートウェイカレッジ」の創設に向けてどのようなことが必要か
末松 ゲートウェイカレッジで学ぶ留学生が増えることで、本学の学生構成員は、より多様化するでしょう。より世界に開かれた、国際的なキャンパスを創るためには、学ぶ内容や教育手法も変えなければなりませんし、学習・生活支援もさらに充実させる必要があります。
湊 大学の包括的国際化を進めることに対して、社会からの理解を得る必要があると考えています。ゲートウェイカレッジという学びの場の充実が、学生の自己実現だけでなく、地域社会・国際社会の発展も促すということを示していかなければならないと思います。