多くの標本と貴重な観測場 東北大学総合学術博物館・植物園
東北大学総合学術博物館と東北大学植物園は、多くの資料標本を保存し研究を支える、東北大学の機関である。
博物館には240万点を超える収蔵品があり、そのうち1100点ほどは学名の基準となる唯一の標本、ホロタイプだ。代表的な展示物、南三陸町で発見されたウタツギョリュウの化石もその中に含まれる。今月には骨格の再検討を行った藻谷先生を招いた講演会も行われる。
もう一つの見どころは展示の忠実性だ。生態の再現図は学生が博物館職員の考証を忠実に守って作成したものである。本学での研究が盛んな、非常に小さく年代や環境の測定に重要な微化石の展示は、実際の水深によるすみ分けを反映している。
大学博物館ならではの重要な役割が、論文に引用された標本を保管し続け、再検討を行う研究者に常に提供できるようにする「証拠の保管場所」であることだ。
簡単に研究に活用できるよう、近年は標本の3Dデジタル化を進めている。一方で標本そのものは捨てることができず、増え続ける標本を適切に保管することが課題となっている。
植物園は標本の保存だけでなく、青葉山に遺る天然性の自然を保護することも運営目的だ。東北大学植物園は「自然植物園」という形態をとり、極力人の手が加わらない自然を維持している。
江戸時代、青葉山は仙台城の「御裏林」と呼ばれ、防衛の観点から樹木の伐採が制限されていた。その後も旧日本陸軍が使用していたため、都市のすぐ横にあるにもかかわらず人間による植林・伐採が行われずに、広い範囲で本来の自然である貴重なモミ林が残った天然記念物に指定されており、重機が使えなかったり伐採のために国の許可が必要であったりといった制約の中で天然に近い森が維持されている。また、モミ林とは別にヤナギを生きたまま系統保存している。ヤナギは雑種を作りやすく、植物園では挿し木によって約200種ものヤナギが育てられており、その数は世界的にも有名だ。
ほかにも研究のフィールドになったり、環境省のモニタリングに20年近く協力したりしている。仙台は南方に生育する常緑広葉樹林と北方に生育する夏緑樹林が共存する貴重な観測場所で、毎月森林の生産量などの統計を取っている。近年は常緑樹の成長量が増加していて、原因としては温暖化や都市化が考えられるそうだ。
(石田彩恵)