【インタビュー】水道インフラの課題解決へ
近年、気候変動や都市化の進展に伴い、水質汚濁などの水環境の諸問題に対する関心が高まっている。今年6月下旬、国際水協会(IWA)に属する水中健康関連微生物専門家グループの座長に就任した、本学大学院工学研究科の佐野大輔教授にインタビューをした。
(聞き手は松村倖太)
―本学研究室および個人の研究内容は
土木工学は基本的に都市生活を快適に、つまり、社会インフラを計画的に作ることや維持することがメインの専門分野です。その中で私は上下水道を専門としています。なぜ上下水道が土木工学にあるかというと、どこに水源を求めて上水道を造り、どうやって使用後の水を集め、処理をして環境に返すか、ということも都市計画の一部だからです。土木工学では橋やトンネルをいかに丈夫に造るかという物理的な話と、交通計画的な数学の話が重要ですが、上下水道分野では、加えて水をきれいにするための化学反応や生物反応も対象となるので、我々の研究室は土木工学の中でも広い学問範囲を対象としています。私はその中でも、水中にいる微生物を専門としています。水中には病原体がいるかもしれないので、どう消毒するか、であるとか、病原体は水中でどのように動いているか、を研究テーマとしています。
―水中健康関連微生物専門家グループはどのような活動をしているか
大学教員や研究所・企業の研究者、トータルで500人ほどが所属するグループです。1万人ほどが所属するIWAという母体の下で、水中の病原体を専門とする研究者が所属しています。2年に1度集まり、国際シンポジウムを主催しています。
―グループの座長に就任した経緯は
システムとしては、ボードメンバーとセクレタリー(秘書係)がいて、この任期が4年間です。4年に1回投票をします。これとは別に、バイスチェア(副座長)を2年、チェア(座長)を2年、パストチェア(前座長)を2年、計6年務め、運営を指揮するというものがあり、バイスチェアになる時に選挙があります。バイスチェアになると、自動的にチェアとパストチェアの6年間を務めることになります。経緯としては、バイスチェアの前にセクレタリーを4年務めるなどの運営をし、その続きとしてチェアを務めています。バイスチェアになる時は、候補が私しかいなかったため、選挙はしませんでした。
―微生物研究の魅力は
日本に住んでいると、水を使っておなかを壊すことは少ないですが、それはしっかり処理をしているからです。ところが、東南アジアやアフリカで衛生的な環境、例えばトイレを整備しようとする場合、人権や最低限の生活を確保することに関わります。世界的に重要な健康に関連しており、水関係のインフラを整備していくことで人類のためになるところがやりがいのある仕事だと思います。
―グループとしてどのような問題を解決したいか
グループの構成員にそれぞれのテーマがあっておのおの頑張って取り組んでいます。ですが、その際にこの集まりは、誰がどこでどういうことをしているかが分かる所のため、そのような情報共有の場を準備して運営することが我々の役割です。また、集会の日程決め、その間のコミュニケーションの確保、IWAでの集会時の我々のセッションづくり、情報発信も行っています。