【研究】乱気流予測計画 国交省が支援
9月24日、本学など4法人が行っている「リアルタイム乱気流予測プロジェクト」が国土交通省の「交通運輸技術開発推進制度」に採択された。これを受け、本プロジェクトは、国交省による補助金の交付など、研究活動に対する強力なサポートが得られるようになった。
昨年12月より、本学、日本航空株式会社(JAL・東京)、株式会社ウェザーニューズ(千葉)、DoerResearch株式会社(愛知)が本プロジェクトを開始した。プロジェクトの一員である本学大学院理学研究科の伊藤純至准教授によると、このプロジェクトは「交通運輸に直接役立つ技術開発が目的」だという。また「3次元的にリアルタイムで推定されている大気の情報を有効に使い、乱気流の予測に役立てたい」と語った。
不規則な気流の乱れである乱気流は、飛行中の航空機を揺動させ、その乗客と乗員を危険にさらし得る。中でも、晴天時に発生する「晴天乱気流」は、視覚的な予兆がほぼなく、予測が難しいとされる。さらに近年、地球温暖化が原因で、晴天乱気流の発生頻度が増加する可能性も指摘されている。
気象を研究する伊藤准教授は、本学流体科学研究所のグループと共同研究する機会があり、乱気流の研究をしていた。その発表論文がJALの安全担当部署の目に留まり、本プロジェクトにつながる共同研究が開始した。ウェザーニューズは事業者向けの天気予報に強く、JALもそのシステムを航空予報に活用しているという。そして、流体科学研究所のOBが設立し、研究開発や支援などを事業として展開しているDoerResearchもプロジェクトに加わった。「この4法人が提携することで、すぐに現場で活用できる技術開発ができることが大きな強み」と伊藤准教授は話す。
乱気流は、台風や低気圧と比べると小さなスケールで起こる現象のため、計算するには解像度を高める必要があるという。また予測を目標とすると、実時間より早く計算しなければならず、そのために必要な計算資源は膨大だ。そこで、今までの天気予報の計算よりもはるかに効率よく予測計算できる人工知能(AI)の活用が期待される。
プロジェクトにおいて本学は、伊藤准教授が中心となり、AIの開発や学習のための高解像度の計算データを提供し、その高解像度計算の検証、乱気流のメカニズムの解析を担当する。
航空会社は国際線において、予報されていない場所で乱気流に遭遇するなど苦労しているという。ウェザーニューズや気象庁も乱気流の予報をしているが、それだけでは取りこぼしていた事例もあった。そうした事例のメカニズムを解析することで、見逃していた乱気流を捕捉できるようにしたいという。
伊藤准教授は「理学は実社会とはかけ離れている研究というイメージを持たれているかもしれない」としつつも、「理学の成果が社会の役に立つということを示していけたら」と理学の可能性にも言及した。
プロジェクトは2027年以降の社会実装を目指している。
