法を学び、社会に生かす 学生が担う法律相談所
本格的な法律相談を、本学の学生が主体となって行っている団体がある。法学部内の自主ゼミの一つ「東北大学無料法律相談所」だ。「宮城県社会事業協会無料法律相談所」として設立されて以降、97年続いている伝統ある団体である。相談は基本的に毎週土曜日、法学部棟内で行われている。
活動の目的は、法律家を志す学生が法律相談の実践を通じて経験を積むと共に、地域社会に貢献することである。教授や協力弁護士の指導の下、日々法律相談にあたっている。
活動に際して相談所が最も大切にしていることは「利用者の安心」だ。匿名での利用が可能であり、相談内容に関係のない個人情報は聞かない方針を徹底。相談記録の管理も厳重で、外部に情報が漏れることはない。また、対面での相談を基本としており、表情や声の調子をくみ取りながら、利用者の心に寄り添う姿勢を大切にしている。安心して話してもらえるよう、丁寧な対応を心掛けている。
当然、回答の正確さについても重視している。寄せられた相談内容を基に回答を練る際、間違った内容を伝えることのないように、文献調査や事例研究を入念に行っているという。相談当日は協力弁護士らと打ち合わせを行い、内容に誤りがないか確認してから回答する。相談時間に制限はなく、長い場合は2~3時間に及ぶこともあるため、入念な準備が大切だ。学生の回答(予審)だけでは安心できない利用者のために、希望に応じて教授や弁護士が補充した回答(主審)をすることもあるそうだ。
主な相談内容は、相続・契約・賃貸などである。地域住民からの相談が大半であり、学生からの相談はアルバイトや交通事故に関するものが年に1~2件ほど。「相談件数が多ければ多いほど所員にとって貴重な経験の場が増えるため、多くの人に利用してほしい」と所員が話す。
実際に所員が相談を行うのは、主に3年生の後期から。それまでの1、2年生は研修や見学を通して知識を蓄える。こうした段階的な育成体制も、長年の歴史の中で培われてきた仕組みだ。
学生たちは「授業で学んだ知識を実際に人の役に立てられることがやりがい」だと口をそろえて話した。また、検討の過程で弁護士や教授から「よく調べられている」と評価されることもあり、自信や成長につながっているという。
今後は、法的知識の研究を重ねつつ、より市民に寄り添った相談活動を目指す方針だ。コロナ禍で一時途切れた縦のつながりを再び強化し、後輩への指導にも力を入れていくという。設立100年を目前に控え、東北大学無料法律相談所は、その伝統を受け継ぎながら、使命を果たし続けるだろう。 (岡崎陸斗)
活動日の玄関の様子(川内南キャンパス法学部棟)
(左)(=同団体提供)


