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【教授インタ】「植物の生き様 明らかに」新種発見 伊東拓郎助教インタビュー

 植物は、生息地の環境に適応して独自の進化を遂げてきた。そのため、見た目がよく似た植物でも実際は別の種だったということがある。植物の系統を明らかにすることは、その植物の進化史をたどることでもある。本学植物園の伊東拓朗助教は、トカラ列島3島(悪石島・臥蛇島・中之島)および与論島に生息するマンネングサ属植物が同地域に固有の新種であることを明らかにし、「サツナンマンネングサ」と命名した。「植物の生き様を明らかにしたい」と語る伊東助教に話を聞いた。                       (聞き手は平山遼)

―植物に興味を持ったきっかけは
 鳥海山の麓に住んでいた祖父母の影響が大きかったです。山菜を取るなど、自然に触れ合う機会が多くありました。
―学生時代はどのように過ごしていたか
 高校時代はサッカー漬けの毎日でした。大学受験の時、植物が好きだったと思い出し、農学部に進学しました。研究者になると決めたのは大学院への進学時です。研究者になるとはそれまで想像もしていませんでした。
―マンネングサ属が主な研究対象
 マンネングサは、サボテンなどに代表される多肉植物の一種です。もともと多肉植物が好きで、その生き様を明らかにしたいと思っていました。多肉植物は南アメリカなどの乾燥した砂漠に多いのですが、実はマンネングサ属は日本にもたくさん生えています。なぜ日本で生きていけるのか不思議に思い、興味を持ちました。
伊東助教が発見した新種の植物・
サツナンマンネングサ(=本人提供)
―マンネングサ属の魅力は
 まずフォルムがかわいい。分厚くてプリプリした、植物とは思えないフォルムをしていて魅力的です。また、乾燥地域で生きていけるよう進化を遂げてきたマンネングサ属ですが、東アジアでは湿った沢や木の幹にも生息していて、さまざまな種が多種多様な生き様を持っているのが面白いですね。
―新種発見までにはどのような過程があったか
 今回新種と判明したサツナンマンネングサは、もともと、九州南部から台湾、フィリピンにかけて広く分布し初夏に花を咲かせるハママンネングサという種だと考えられていました。ところが、植物標本を見て、薩南諸島の個体は秋に花を咲かせることが分かりました。標本を見た時点で、まだ名前のない植物だろうと確信しました。現地に行った時にはすでに確信があったので、驚きはそんなになかったですね。「ああ、いたいた」という心境でした。
―植物を新種と確定させるには、どのような過程があるのか
 まず既存の植物との違いを調べます。今まで知られている植物にはない特徴を明らかにするためです。最近では遺伝子解析も行われています。遺伝子も形も違うと分かったら、新種として記載論文を発表します。
―今後の研究の見通しは
 今回の論文では、サツナンマンネングサのごく一部の遺伝子配列しか解読していません。今後ゲノムレベルで遺伝子解読を進めていくことで、サツナンマンネングサがいつどこで生まれたのか、より詳細な進化史を明らかにできると考えています。
 他にも行いたい研究はたくさんあるのですが、今一番注目しているのは小笠原諸島です。小笠原やハワイのような海洋島(一度も陸続きになったことのない島)では、例えば草が木になるなど、さまざまな島で似たような進化を遂げるアイランドシンドロームという現象が知られています。この現象が起きるメカニズムを、小笠原の植物を対象にして網羅的に調べていきたいと考えています。
―自身の経験を振り返って、学生にメッセージを
 学生時代は、とにかく行動してみると世界が開けることがあります。自分も将来に悩んでいる時期がありましたが、園芸植物店にインターンに行ったり、世界中の植物に会いに行ったりと植物との関わり方を模索して行動してみました。その結果、教科書では知り得ない植物の側面が見えるようになりました。そして、自分は単純に植物の生き様を知りたいのだと気付き、この道を選びました。時には深く考えず、とにかく行動してみることで予想だにしない世界が見えてくることがあり、人生の選択肢が増えると思います。
与那国島で植物を調査する伊東助教
 (=本人提供
インタビュー 9022827110650146487
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