【部活動】模擬裁判 練習期間を追う
多くの市民に「法と社会の関わり」について考えてもらうきっかけを作るために活動する本学法学部模擬裁判実行委員会。本学法学部の1~3年生が運営する自主ゼミで、毎年秋に裁判劇の公演を行っている。第74回となる今年度のテーマは「内部通報」。公演1カ月前から当日までの様子を追った。 (松村倖太)
火曜日を除く平日の午後4時半~6時は、川内萩ホール(川内南キャンパス)の前に集まる。取り組むのはボイストレーニングだ。2、3年生の指導の下、キャストを務める1年生が声出しをする。
演出主任の根岸くるりさん(法・3)によると、キャストは舞台上で腹式呼吸を使うという。上級生の補助の下、1年生はその感覚を身につけていく。
せりふの発声では「鼻声になっている」「年齢感を出すように」などとそれぞれに即した指導が行われた。
声出しに際し、練習段階で喉をつぶすわけにはいかない。練習では「喉が痛くなる」と言う1年生も見られたが、根岸さんは「喉を守りつつ、舞台で必要な声量や表現力を発揮できる発声方法を次第に見つけていく」とキャストの成長を見込んでいた。
平日の午後6時~8時は、法学部第1講義室(川内南キャンパス)にて演劇練習を行う。
ボイストレーニングでは立ったまま発声するのみだったが、演劇練習では歩く、座るなどの動作も加わる。
約3時間の劇を15シーンほどに分け、各グループで練習する。練習時に欠席のキャストがいる場合は上級生が代役を担当し、臨機応変に行われた。
テンポや緩急といったせりふ発声の指摘だけでなく、「顔で表現しきれない感情は全身で」などと、動作上の指導もなされた。
主演の杉田知泰さん(法・1)は、演技において特に意識している点を「感情を全て言語化し、自分で割合を定めて順序立てること」と語り、演技への向き合い方を示した。
動作やせりふの練習だけでなく、座学も行う。「この人物はあの人物を気に入っている」「敵対心がある」というような心情理解にも努める。
毎週土曜日には通し練習が行われた。BGMを流し、衣装の着込みや小道具の準備も行うなど、本番仕様での練習に取り組んだという。
本公演のタイトルは「ハレーション―不正を告げる口―」。企業などの内部で行われている不正を、企業の通報窓口に訴える制度である「内部通報」をテーマとしている。シナリオ主任の柴谷多珠季さん(法・3)は「内部通報という制度を周知し、実態として正しく運用されているかを伝えたい」という思いがテーマに込められていると語った。
ストーリーの舞台は架空の運輸会社「カササギ運輸」。本部長の大垣隆秀は業務効率化のため、息子で部下の輝秀へ、本来はコンプライアンス違反であるトラックの過積載を指示した。輝秀との雑談からそのことを知った他支局長たちは、社内相談窓口に内部通報する。息子が通報されたことを知った隆秀は通報者を特定しようと動き、その結果、支局長1人が辞職する。これを問題視した他支局長は隆秀に対し、民事裁判を起こす。
事件の争点は「内部通報者を特定する行為」と「どう喝による退職の強要」の2点。原告は秘匿性の侵害やパワーハラスメントを主張。一方、被告は特定の意図はなく、事務的なやりとりしかなかったと反論した。
本劇では審理の結果、裁判所は原告の支局長らの主張を認め、被告の隆秀に対し金銭の支払いを命じた。
公演当日、会場の萩ホールには老若男女問わず、多くの観客が来場した。
開演前にはスライドでカササギ運輸の社員インタビューが上映されるなど、観客を楽しませる趣向が凝らされた。劇中でも日付や状況をスライドで説明し、暗転などで場面転換を分かりやすくする工夫が施された。
キャストは役柄に応じた自然な調子で会話を行い、感情表現も的確に行った。
劇中では、公判の様子に加え、最終的な判決を決める際の裁判官同士の協議の場面も演劇として再現。通常は公開されない裁判の裏側という場面も演じられ、観客に裁判の過程を伝える構成となった。
公演終了後、会場は大きな拍手に包まれた。
実行委員長の内藤裕雅さん(法・3)は「今までで一番だったと自信を持って言える公演で、この団体に入って本当によかったと思えるものでした。そしてその最高の公演を創り上げてくれた1〜3年生のみんなに感謝したいです」と振り返り、下級生へ感謝を述べた。また「今の1、2年生たちには今回の公演よりも素晴らしいものを創っていってほしいなと思います」と期待を寄せた。
