【一言居士】━2026年7月号━
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先月、祖母が亡くなった。白布をまとい眠るその姿は、生前の面影を残しながらも、ずいぶん痩せ細って見えた。
幼い頃、夏休みになると兄と一緒に祖母の家に預けられた。田舎のうだるような暑さの中、3人で散歩に出かけ、セミの抜け殻を拾い、祖母が自販機で買ってくれたジュースを飲み干した。
あれから十数年。過去を思い出すたびに言いようのない哀感に襲われる。今までの人生に不満があるわけではない。それでも、もう戻れない日々に強く惹かれるのは、未来の自分に自信が持てないからだろう。
将来どのような人になりたいか」。就職活動の最中、幾度となく繰り返される問いだ。「自身の成長を社会に還元できる人に」と笑顔で応えながら、胸の奥では疑問が渦巻く。「本当にそれは私の言葉なのか」 。
やりたい仕事は何か。結婚、出産はするのか。未来はいつも不透明で、ついあの夏に逃げ込みたくなる。だが、時計の針が巻き戻ることはない。
もうすぐ訪れる息苦しいほどの夏に向かって、私はただ、慣れないスーツの襟を正す。
(文責・高橋温)
