【研究】解説、ILC構想 ~東北に建設計画~
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リニアコライダーの国際推進組織であるリニアコライダー・コラボレーション(LCC)と国際リニアコライダー(ILC)の測定器グループであるILDグループ、そして東北大学ILC推進会議の主催で、ILC立地予定地である岩手県にてILCに関する二つの国際会議が、9月4日から9日にかけて開催された。ILCに参加している本学大学院理学研究科の山本均教授に、ILCについてお話を伺った。
ILCとは、電子と陽電子に大きなエネルギーを与えて衝突させるための加速器のこと。その開発が国際的な協力によって推進されている。
2012年に欧州原子核研究機構(CERN)の研究所でヒッグス粒子が発見され、
大きな話題となった。しかしこの発見は、ヒッグス粒子の質量に関する謎など現在の素粒子理論の大きな問題を浮き彫りにした。それを解析しようと計画されているのが、ILCを利用した衝突実験である。またこの実験によってビックバンの発生直後の環境を再現できると予想され、暗黒物質の正体や余剰次元の可能性を知ることもできると期待されている。
大きな話題となった。しかしこの発見は、ヒッグス粒子の質量に関する謎など現在の素粒子理論の大きな問題を浮き彫りにした。それを解析しようと計画されているのが、ILCを利用した衝突実験である。またこの実験によってビックバンの発生直後の環境を再現できると予想され、暗黒物質の正体や余剰次元の可能性を知ることもできると期待されている。
CERNにもLHCという巨大加速器があり、ヒッグス粒子はLHCを利用した衝突実験で発見された。だがLHCは陽子同士を衝突させる加速器で、一回の実験で多くの衝突が発生し、事象の複雑化や、ノイズとなる背景事象の割合が高いなどの欠点がある。一方でILCは陽子より小さい電子と陽電子を衝突させることで、ヒッグス粒子が多く発生しLHC50台分の精度を持つ。ただLHCはILCではできない重い粒子が発生する可能性があり、ILCとLHCは補完関係にある。
北上山地はILC立地の国内候補地として2013年に選定され、現段階で加速器の設計が行われている唯一の場所だ。ILCの立地が北上山地に決定された場合、世界中から何千人もの研究者が訪れるため地元経済が活性化するほか、最新技術が集まることが起爆剤となって新たなビジネスチャンスが生まれるなどのメリットが考えられる。
日本の地震の多さから、事故を心配する声がある。ただILCは地下深くに建設されるため地震の揺れは地表より弱く、地表で放射線はほとんど検出されず人体に影響を与えない。また加速器の使用電力はそれほど大きくなく、東京電力と協議した結果、日本の電力供給に影響は無いと計算されている。
本学がILCに貢献できることは、 地理的に現地と近いことを生かしたILCの設計や立地自治体とのやりとりなどが挙げられる。本学は世界有数の物理学の研究拠点だ。素粒子物理学の発展のために、ILCのヘッドクォーターの1つとして果たす役割は大きい。