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【働くこととは】⑮荒蝦夷代表取締役 土方正志さん

 第15回となる特集「働くこととは」。今回は仙台に拠点を置く出版社「荒蝦夷(あらえみし)」の代表取締役である土方正志さんに話を伺った。




―現在の仕事内容について
 
 荒蝦夷では主に雑誌と本を出版しています。雑誌を出版する時は、まず企画を立て、資料や人を集め、ライターに原稿を依頼して、ページを編集します。本を出版する時も、雑誌と同様に自ら企画・編集をしています。また、雑誌で連載したものをまとめたり絶版になった本を復刻したりすることにも力を入れています。


―編集という仕事について

 昔は「編集と言う仕事は黒子だ」と言われていました。つまり主役は本と作家であり、編集者は陰の存在であるという意味です。しかし今日では、本離れが進んでいると言われているので、編集者自身が読者に本をアピールしていかなければならないのです。その一環として、荒蝦夷では本に関するイベントをやっています。たとえば文芸評論家の東雅夫氏とタッグを組んで2010年から毎年「みちのく怪談コンテスト」を企画しています。私自身も怪談に関心があり、書店で怪談会を開くことがあります。この5年間で仙台や山形で20回以上のイベントを実施しました。


―荒蝦夷という会社の特色について

 荒蝦夷には、私を含めて社員が2人しかいません。大手出版社のように、多くの人員を動員して万人受けする本を出版することはできません。荒蝦夷は主に東北6県に本を卸していて、読者も東北の方が多いです。読者の近くに暮らし読者が目に見えることは、地元に密着した出版社の強みだと思います。


―働くこととは

 仕事に関する考え方は、震災の前後で大きく変わりました。震災の時に「自分の仕事は何ができるのか」を突きつけられ、仕事を続けられるか不安を感じました。震災後数日間は廃業しようと考えたこともありました。しかし多くの人に支えられていると知り、続けていかないといけないと思うようになりました。震災前は自分で選んで仕事をしていると思っていましたが、実は仕事が自分を選んでいると感じるようになりました。震災がなければ気づかないことでしたね。
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