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【書評】『東京難民』 福澤徹三 光文社

 近年日本では大学進学率が大幅に向上し、短期大学や専門学校を含めるとおおよそ2人に1人以上が進学という選択をしている。この選択は果たして個人の幸福に結び付くのだろうか。本書『東京難民』はその問いを本質的に考えるうえで我々に大きなインパクトを与える。




 本作の主人公時枝修は大学に進学するものの、普通の大学生と同じく友人との交友し、時折アルバイトをして過ごす堕落した生活を送っていた。

 しかし、生活費や学費を工面してくれた父親が借金を抱え行方をくらまし、ついには授業料未納により除籍されてしまう。時枝は家賃も払うことができなくなりアパートを追い出され、いわゆるネカフェ難民として転々とした日々を過ごすことを余儀なくされる。

 当時付き合っていた恋人には見放され、何とか働いてお金を稼ごうとするも上手くいかず、ついにはすべてを失いホームレスにまで堕ちてしまう。その逆境の中で時枝は次第に再び新たな一歩を踏み出そうとしていく。

 普通の大学生から突然社会の中に放り込まれ、八方ふさがりの中で社会の厳しさを痛感し打ちひしがれる時枝の姿は他人事ではないように感じられる。そしてレールを外れてしまった者に対する日本の社会の冷淡さが鮮明に、そして恐ろしさを感じさせるほどリアルに描かれている。

 多くの大学で新たなセメスターが始まるこの秋、そして「なんとなく」の進学をしてしまった学生が氾濫する今だからこそ、もう一度自分を省みるために本書は一読の価値があるのではないだろうか。
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