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【研究成果】嵐から脈動実態波を観測 ~脈動S波の検出世界初~ 爆弾低気圧と震源の関係明らかに

 東京大学の西田究准教授、理学研究科の高木凉太助教らは、大西洋沖で発生した爆弾低気圧によって励起された脈動実体波を日本の観測記録を用いて観測し、嵐によってP波だけではなくS波も励起されることを世界で初めて検出した。地震以外で震源となり得るものが見つかったこと地球の地下構造をより詳細に解析することが可能となる。




 現在、地球の地下構造を調べるために地震波を用いた解析が行われている。しかし、地震が発生する場所は限られているため詳細な解析ができない場所も多い。そのため、嵐の際に発生する海の波によって励起される「脈動」と呼ばれる波を用いる方法が模索されていた。

 脈動を用いて地下構造を決定する場合、地球の表面を伝播する「表面波」を用いることが多い。しかし、この方法だと地球の表面の構造しか決定できない。地球のより内部の構造を調べる場合、地球の内部を伝播する「実体波」を用いる必要がある。

 また、脈動は嵐が引き起こす波が海を揺らし、圧力の変化を引き起こすことによって励起されるため、密度の変化によって生じる疎密波であるP 波が主に発生する。それに対して、面を平行に移動させようとするせん断力によって発生するS波はP波に比べとても小さい。そのため、今まで嵐によって励起されたS波が検出されることは無かった。

 2014年冬、高木助教らは地震計観測網「Hi-net」の観測データの中に奇妙な信号が含まれていることに気がついた。それを解析すると大西洋上で起こっていた爆弾低気圧によって励起された脈動実体波が原因であることがわかった。また、脈動S波の検出に世界で初めて成功した。

 また、観測された脈動P波の速さの分布から震源の位置を正確に推定すると、爆弾低気圧の移動とともに震源も移動している様子が明らかとなり、低気圧の移動と震源の移動は必ずしも対応していないことが確認された。

 これには、二つの原因が考えられている。一つは、脈動は波がいろいろな方向に伝播しているときに励起されるためである。もう一つは、共鳴が起こり一定の深さのところで脈動が強くなるためである。実際に震源の位置と大西洋の海底の地形を比べてみると、震源は低気圧の移動とともに一定の深さに沿って移動している。

 この研究は雑誌「science」の表紙を飾るほど注目されており、この研究によって今まで調査できなかった海洋直下の構造などを推定できることが期待される。今後の展望として高木助教は、「地球内部は直接調べることができないため、地震波は地球内部をよく見るための光の様なものだ。今後は、メカニズムを調べることでP波、S波のカタログを作成し、地下の構造を決定することを目標としている」と意気込んだ。
研究成果 641846319273790120
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