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【書評】『幻獣ムベンベを追え』 高野秀行 集英社文庫

 旅や冒険、探検に憧れる人は多いだろう。見知らぬ土地に行き、未知の体験をすることで、自分の世界観が変わりそうな予感、何かが待っているという期待感。それでもやはり、拭い切れないのは「不安感」だ。憧れてはいても、実際に一歩踏み出すまでには多少の勇気がいる。




 このノンフィクションを読んで、探検家たちの思い切りの良さに度肝を抜かれた。「えーと、それでぼくたちは怪獣を探しに行こうと思ってます」。1986年、早稲田大学探検部のミーティングで当時大学3年生だった筆者・高野秀行氏は言った。コンゴ共和国奥地の湖に、謎の怪獣・モケーレ・ムベンベが棲息しているといわれている。その怪獣を探しにジャングルへ行こうと言うのだ。筆者をはじめとした探検部員11人は、熱帯ジャングルでの怪獣探索サバイバルに挑む。

 コンゴの密林で怪獣探しをするだなんて聞けば耳を疑うが、本人たちは大真面目である。怪獣やコンゴに関する多くの文献を翻訳し、入国許可を申請し、スポンサーの協力により機材を調達し、現地の言語を学び、現地人とともに湖へ赴き、超過酷なキャンプ生活の中で、連日湖の観察をする。呆れてしまうほどのことを、自分と同じ大学生たちがやってしまったのだ。

 私には想像もつかないような体験を、笑いどころ満載の文でつづっているこの本。怪獣は発見できるのかとつい引き込まれてしまう。「何とかなると思えば、たいてい何とかなる」というのは筆者の信念。読んでいると勇気が湧いてくる一冊だ。
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