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【特別インタビュー】本屋大賞受賞作家 恩田陸さん ~大学で限界と独学を経験すべき~

 恩田陸さんは、ファンタジーからミステリーまで、幅広いジャンルで執筆を行う仙台出身の作家である。今回は、恩田陸さんに作家の生活や大学時代のことを伺った。




―作家になったきっかけは何ですか

 子どものころから本が好きで、マンガも含めて多くの本を読んでいました。大学を卒業後は就職しましたが、なかなか本を読む時間を作れずストレスを感じていて、読みたい小説が読めないなら書いてやるという気持ちに変わり、勢いで応募した作品がデビュー作となりました。

―恩田陸という名前の由来は何ですか

 「やっぱり猫が好き」と言うドラマがあり、登場人物の名前の恩田家から取りました。私はお酒が好きなので、たまに「on the rock」が由来ではないかと聞かれますね。「恩田陸」は性別がわかりにくい名前なので、当初は編集の方から変えろと言われたのですが、代替案を言うと、「恩田陸でもいいかも」と言われ、そのまま決まりました。

―どのような大学時代を過ごしましたか

 ビッグバンドジャズのサークルに所属し、アルトサックスを吹いていました。それ以外の時間はほとんど本を読んでいました。もっとたくさん古典作品を読んでおけばよかったなと今でも思います。

―印象に残っている本はありますか

 あまりにもたくさんあるので、すぐには思いつきませんね。人間は本を読むこと以外に他人の人生を追体験することができません。本を読んでいないと狭いところにいるような息苦しさを感じます。だから、ジャンルに囚われず様々な本を読んできました。

―作家の仕事について教えてください


 作家は基本的に自分一人で全部できるので、私の性に合っています。あと、通勤しなくて済むことも嬉しいです。

 小説のネタについては常にもやもやと考えており、必要ならば取材や資料集めを行います。創作物というのは過去に創作されたものの組み合わせで成り立っているので、新しく作るというよりは演出を変える感覚で小説を書いています。たまに行き詰まることもありますが、散歩をしたり、お酒を飲んだりすることで気分転換しています。

―どのようなことに仕事のやりがいを感じますか

 作家を続けていくのはとても大変です。必死にレベルを維持しているつもりでもどうしても縮小再生産になってしまいます。だから、常にこれまで書いたことのないものにないものに挑戦することに難しさとやりがいを感じています。

―様々なジャンルの作品を書いているのはなぜですか

 飽きっぽいからです。縮小再生産を続けるためでもあります。怖いものや気持ち悪いものは低いテンションで書けるのでやりやすいです。逆に、テンションを上げないと書けないコメディはすごく難しく感じます。

―本学学生に一言お願いします

 大学生のうちに己の限界は経験しておくべきだと思います。私も希望の学部に行けず、自分の限界を経験したことで今の自分があります。

 また、独学の習慣をつけておくことも大切です。今の日本の社会は余裕がなくて、新人を丁寧に育てることが難しくなっています。古典と呼ばれるものを読んでおくのもおすすめです。今すぐ役に立つわけではないけれど長期的にじわじわ効いてきます。あと、仕事というものはある程度量をこなさないとわかりません。若いうちはまず体験してみて、繰り返してみるのが大事だと思います。

 東北大は、地に足の着いた、理念と実学がきちんとかみ合った素晴らしい大学だと思います。将来日本を背負うことになる皆さんに、本当に期待しています。

* * *

 恩田陸さんは、2017年1月に発表された「第156回芥川賞・直木賞」において、『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞を受賞しました。東北大学友会報道部から心よりお祝い申し上げます。

 また『蜜蜂と遠雷』は、2017年4月に「2017年本屋大賞」を受賞しました。同一年に直木賞と本屋大賞のダブル受賞、同一作家の本屋大賞複数回受賞は史上初めての快挙となりました。本当におめでとうございます。
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