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被害者支援へ学生動く ~旧優生保護法判決受け~

 差別や偏見のない社会を創り、被害者を真に救済するために何ができるのか―。知的障害を理由に旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられた宮城県内の女性2人が国に対して損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は原告の訴えを退ける判決を出した。それを受け、本学の学生が被害者支援に向けたプロジェクトを立ち上げた。先月21日にはその活動の一環として、旧法や判決を巡り、仙台弁護団太田伸二弁護士らを交え意見交換するイベントを開催。学生や教員ら約30人が参加した。

 イベント前半では太田弁護士が旧法や判決の要旨について解説した。今回の判決では旧法が「不妊手術を強制し、子を産み育てる幸福(リプロダクティブ権)を一方的に奪うものだ」として、幸福追求権を定めた憲法13条に違反するとした。しかし判決は、女性らの損害賠償の訴えそのものを退けた。不法行為から20年が過ぎると損害賠償請求権がなくなる「除斥期間」という規定が民法にあり、それを適用したためだ。

 それだけでなく、被害者に対する補償措置を怠ってきた政府や国側の責任(立法不作為)は認められなかった。日本ではリプロダクティブ権を巡る議論の蓄積が少なく、立法の必要性が国会で明確ではなかったとされた。太田弁護士はこの判決について「旧法が人権を奪っていた事実を厳しく指摘しておきながら、賠償が認められないのは不当ではないか」と除斥期間の適用に疑問を呈した。

 さらに、国連人権規約委員会や国連女性差別撤廃委員会が旧法の問題点を指摘していた事実などを引き合いに出し、立法不作為を認めるべきだと主張した。学生らに対しては、「裁判に関心を持ち、身近にある優生思想に目を向けてほしい。また、学生同士で話し合うことが大切だ」と語った。

 イベントの後半では、参加者同士で判決や被害者支援のあるべき姿についてディスカッションが行われた。「成立した一時金支給法では不十分だ」「自分自身が被害者の立場なら到底納得できない」といった意見が出た。ある学生は、世論の関心の低さを指摘。「学生を含め世の中の人々がもっとこの問題に関して関心を持ち、一人一人が被害者に向き合うことでより良い補償ができるのではないか」と語った。

 プロジェクトは、本学「学問と社会をつなぐサロン」の有志のメンバーが立ち上げた。今後はこのようなイベントを開催するだけではなく、被害者の十分な補償や公正な判決を求め、署名活動を行いたいという。プロジェクト代表の鴫原宏一朗さん(法・3)は「優生思想に関する問題は現代的課題だ。学生同士が問題意識を持ち行動することで、社会的な関心を喚起していきたい」と力を込めた。

 旧優生保護法の下で不妊手術を強制された人は1万6千人以上に上る。差別や偏見のない世の中を創り、真に被害者を補償する。そのために何ができるのか。政府や国会だけではなく私たち学生一人一人に改めて問われている。
イベント 5762358104115009642
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