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学術雑誌の動向に関するセミナー2019 ~オープンアクセスの現状・課題~

 学術雑誌の動向に関するセミナー2019「学術雑誌は誰のもの? 研究力強化とオープンアクセスのリテラシー」が先月28日、青葉山東キャンパス工学部中央棟で開催された。本学図書館長を務める大隅典子副学長が講演し、本学におけるオープンアクセス(OA)の現状と課題、それに伴う図書館のあるべき姿の変化を語った。質疑応答では、参加者から数多くの率直な意見が集まった。


 学術論文をインターネット上に公開(オープンアクセス化)しようとする動きが世界中で広まりつつある。これはオープンサイエンスの理念に基づき、専門的な科学的知見や最新の研究を広く共有し、イノベーションを促進することが目的だ。本学でも昨年発表された「東北大学ビジョン2030」の中でオープンサイエンスの基盤構築が主要施策に位置付けられ、附属図書館を中心として広報や推進活動が行われている。

 OAの手法は大きく二つに分類できる。一つは出版社に追加の論文掲載料(APC)を支払い、無料の電子ジャーナルとして公開するゴールドオープンアクセスである。代表的なOA雑誌には「Scientific Reports」や「PLOS ONE」などが挙げられる。

 もう一つ、著者の所属する研究機関などのサーバー上に論文をアーカイブ化して公開するグリーンオープンアクセスがある。本学では「東北大学機関リポジトリ(TOUR)」上で論文を公開・閲覧することが可能だ。

 OAには読者・著者双方に利点がある。読者は時間・場所を問わず、多様な論文に対価を支払わずアクセスできる。一方、著者は多くの読者を獲得することで引用数など論文の社会的な影響力を強め、自身の評価を高めることが可能だ。

 コスト面でも大きな利益があるとされる。昨今の学術雑誌の購読料は、高額な電子ジャーナルの台頭もあり急激に高騰している。地方の大学では今まで読めていた雑誌が費用の問題から手に入らなくなる場合もあるという。OA論文数を増やす、あるいは購読料とAPCを一括で契約することで、学術雑誌の流通にかかる負担は現在よりも大幅に削減されると言われている。

 一方、高額なAPCによる研究者間の格差や同一雑誌内のOA論文と非OA論文の混在、APC目的の粗悪なOA雑誌の出現など課題も山積している。大隅館長は本学における最新の状況や海外での事例を取り上げつつ、より良い形でのOAの推進を訴えた。

 現代において、高度に発達した科学技術は安定した生活の基盤を形成している。しかし、各専門領域のブラックボックス化が著しく、いまだ社会と科学の間には隔たりがある。その上、情報化が進んだことで科学的根拠の曖昧な風説が拡散し、行政や教育機関が判断を誤った例も数多い。

 論文をOAにすることは新たな技術や産業の創出だけでなく、社会全体の科学リテラシーを向上することにもつながるだろう。大半の研究に公金が投じられていることもあり、OAをはじめとした研究成果の一般公開は大学や研究者の新たな社会的責務の一つと言えるのではないだろうか。

 本セミナーは各キャンパスで繰り返し開かれる予定だ。次回は来月30日に青葉山コモンズで開かれる。学部生の参加も積極的に受け入れており、専門用語や複雑な内容も一から分かりやすく解説される。研究や論文投稿に関心のある方、それらを控える方は足を運んでみてはいかがだろうか。

講演会 3753893582978485803
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