【一言居士】―2019年6月― 雨空を歩く
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雨の匂いを嗅ぐと、なんだか懐かしい気持ちになる。小さかった頃、雨が降ると母親が学校へ迎えに来てくれて妹と3人一緒に帰った、温かな記憶の中にある匂いだからだろうか▼普段は自転車でも、雨の日には歩いて登校することにしている。最初はなんとなく始めたことだったが、今ではすっかり習慣となった。たとえ普段より時間がかかってしまっても、変わらぬはずの通学路が不思議と特別な散歩コースに思える▼いつもは自転車に乗って一瞬で通り過ぎてしまう景色も、歩けば十分見渡す余裕がある。雨の日独特の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、新しく出来たお店を見つけたり、道路脇の植物の名前をあれこれと思い出したりしながら歩く楽しさに気付かされた▼雨の日は憂鬱になりがちだとはよく聞くが、幼い頃の時間に思いをはせ、懐かしさと少しの切なさを味わう時間を大切に、歩みを進める。雨の日の特別な散歩は、まだまだ当分やめられそうにない。
(文責・三ツ村)