【研究・研究成果】隕石から糖を検出 ~宇宙からRNAの材料が?~
https://ton-press.blogspot.com/2020/02/inseki.html
本学の古川善博准教授、中村智樹教授らの研究グループは、2種類の炭素質隕石から、リボースやアラビノースなどの糖を初めて検出した。このことは、宇宙にも生命を構成する糖が存在することを示す発見である。つまり、隕石とともに飛来した糖が、地球上の生命の起源につながる材料の一部となった可能性がある。
隕石から糖を検出する方法として、主にガスクロマトグラフィーという手法が用いられる。試料に誘導体化という化学処理をし、高温下で気化させた後、カラムに移動させる。それを物質の大きさ・質量・電荷などの物理的性質によって、成分ごとに分離する手法であるクロマトグラフィーの原理で各成分に分離、検出器で電気信号に変換する。それをもとに、横軸に時間、縦軸に信号強度をとることでクロマトグラムが得られる。そのクロマトグラムから、物質の同定と定量を行う。これがガスクロマトグラフィーの原理である。リボースを含む糖類は平衡状態で鎖状構造や環状構造といった複数の構造をとるため、それまでの研究で典型的に行われてきた誘導体化では、同一の糖から複数の信号が検出される。そのため、これまでの検出手順では糖の同定が困難であった。古川准教授らは、糖の構造を鎖状構造のみの一つに限定する誘導体化を行い、検知する信号を糖1種類につき一つに絞った。このことで糖の明確な同定が可能となり、今回のリボースの発見につながった。
リボースは、リン酸、核酸塩基と同じくRNAの合成に不可欠な有機物である。RNAはDNAと同じように遺伝情報の維持を行う。さらにリボザイムと呼ばれるRNAは、タンパク質のように生体反応の触媒として働く。そのため、現在多くの研究者が、初期の生命では、RNAがDNAとタンパク質の両方の役割を担った単純な生命であったというRNAワールド仮説を支持している。この点においてもリボースの発見は大きな意義を持つ。
今回糖が検出された二つの隕石の起源は火星と木星の間にある小惑星帯であり、太陽系誕生前、または初期に生成されたもの。最初期の地球には多くの隕石が飛来していたことはよく知られており、それらの中に生命にとって必要な糖が含まれていた可能性は極めて高い。また、古川准教授が過去に行った実験により、地球海洋に隕石が衝突する際、一般の有機物と同じく、無機物から核酸塩基やアミノ酸などの有機物が生成されることが示唆されている。リン酸塩もまた、隕石により地球にもたらされた可能性が研究により示されている。これらのことから、RNAの材料全てが隕石に関連して供給や生成が行われていた可能性が示された格好だ。
古川准教授は生命の起源を解明する研究を幅広い観点から行っている。今回の隕石の解析はその一環であり、宇宙由来の有機物だけでなく、地球由来の有機物についても着目している。一般的に、生命の誕生に必要な有機物の合成には液体の水の存在が不可欠だとされている。そのため、地球外生命体の探索は主にハビタブルゾーンに絞って行われる。しかしながら、RNAの合成やアミノ酸の重合によって作られるタンパク質の合成は脱水反応であり、無水条件下での合成が好ましいと指摘している。つまり、生命の誕生には惑星の海と陸の存在が非常に重要であると古川准教授は考えているのだ。「ハビタブルゾーンはあくまで液体の水が存在する領域。生命がいるという意味ではない」と語った。
今回の隕石からのリボースの発見により、生命の材料といえる物質の起源の一端が明らかとなった。しかし、リボースを含めたそれらの物質からRNAを合成する試みは未だ成功しておらず、世界中の研究者が合成実験を行っている。古川准教授らは、NASAから隕石の試料の提供を受けて糖の検出を続けると同時に、RNAの合成実験なども並行して行っていくという。今後の研究によって、生命の起源の解明が進むことに期待がかかる。
隕石から糖を検出する方法として、主にガスクロマトグラフィーという手法が用いられる。試料に誘導体化という化学処理をし、高温下で気化させた後、カラムに移動させる。それを物質の大きさ・質量・電荷などの物理的性質によって、成分ごとに分離する手法であるクロマトグラフィーの原理で各成分に分離、検出器で電気信号に変換する。それをもとに、横軸に時間、縦軸に信号強度をとることでクロマトグラムが得られる。そのクロマトグラムから、物質の同定と定量を行う。これがガスクロマトグラフィーの原理である。リボースを含む糖類は平衡状態で鎖状構造や環状構造といった複数の構造をとるため、それまでの研究で典型的に行われてきた誘導体化では、同一の糖から複数の信号が検出される。そのため、これまでの検出手順では糖の同定が困難であった。古川准教授らは、糖の構造を鎖状構造のみの一つに限定する誘導体化を行い、検知する信号を糖1種類につき一つに絞った。このことで糖の明確な同定が可能となり、今回のリボースの発見につながった。
リボースは、リン酸、核酸塩基と同じくRNAの合成に不可欠な有機物である。RNAはDNAと同じように遺伝情報の維持を行う。さらにリボザイムと呼ばれるRNAは、タンパク質のように生体反応の触媒として働く。そのため、現在多くの研究者が、初期の生命では、RNAがDNAとタンパク質の両方の役割を担った単純な生命であったというRNAワールド仮説を支持している。この点においてもリボースの発見は大きな意義を持つ。
今回糖が検出された二つの隕石の起源は火星と木星の間にある小惑星帯であり、太陽系誕生前、または初期に生成されたもの。最初期の地球には多くの隕石が飛来していたことはよく知られており、それらの中に生命にとって必要な糖が含まれていた可能性は極めて高い。また、古川准教授が過去に行った実験により、地球海洋に隕石が衝突する際、一般の有機物と同じく、無機物から核酸塩基やアミノ酸などの有機物が生成されることが示唆されている。リン酸塩もまた、隕石により地球にもたらされた可能性が研究により示されている。これらのことから、RNAの材料全てが隕石に関連して供給や生成が行われていた可能性が示された格好だ。
古川准教授は生命の起源を解明する研究を幅広い観点から行っている。今回の隕石の解析はその一環であり、宇宙由来の有機物だけでなく、地球由来の有機物についても着目している。一般的に、生命の誕生に必要な有機物の合成には液体の水の存在が不可欠だとされている。そのため、地球外生命体の探索は主にハビタブルゾーンに絞って行われる。しかしながら、RNAの合成やアミノ酸の重合によって作られるタンパク質の合成は脱水反応であり、無水条件下での合成が好ましいと指摘している。つまり、生命の誕生には惑星の海と陸の存在が非常に重要であると古川准教授は考えているのだ。「ハビタブルゾーンはあくまで液体の水が存在する領域。生命がいるという意味ではない」と語った。
今回の隕石からのリボースの発見により、生命の材料といえる物質の起源の一端が明らかとなった。しかし、リボースを含めたそれらの物質からRNAを合成する試みは未だ成功しておらず、世界中の研究者が合成実験を行っている。古川准教授らは、NASAから隕石の試料の提供を受けて糖の検出を続けると同時に、RNAの合成実験なども並行して行っていくという。今後の研究によって、生命の起源の解明が進むことに期待がかかる。