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【映画評】『シン・ゴジラ』庵野秀明 監督 2016年

 今回紹介するのは、映画『シン・ゴジラ』だ。脚本、編集、総監督を庵野秀明さん、主演を長谷川博己さんが務め、2016年に公開された、いわゆるゴジラ映画である。しかし、私たちが一般に「ゴジラ映画」と聞いたときに思い浮かべる、ゴジラと怪獣が戦って街が破壊されるというようなタイプではない。この作品は東京湾アクアラインでのトンネル崩落事故から始まり、首都東京へのゴジラの上陸、それに対応する官僚、研究者たち、自衛隊、政府の動きを描く。むしろ、日本政府や官僚たち、自衛隊の動きにフォーカスした作品である。その意味で、今までに無かったタイプの映画作品と言えるだろう。


 緊急事態に直面したとき、その組織の本質が暴き出される。ご多分に漏れず、ゴジラ出現後の日本政府も混乱に陥る。決められない政治、対米追従、日和見主義。現実世界でも指摘されることも多いこれらの問題が噴出し、見ている側としても残念な気持ちになる。その分、非常にリアリティーが追求されているといえるのではないだろうか。

 ゴジラ撃退に向けプランを立案したのは、官僚、研究者、さらに若い政治家たちであった。「この国の最大の力は、この現場にあり」。長谷川さん演じる若手政治家の主人公・矢口蘭堂はこのように述べた。諸外国からの干渉、ゴジラに関する新事実の発見など、さまざまな障害にぶつかりながらも、それを乗り越え、プランを確立させていく。そこに魅力を感じる人も多いことだろう。

 また、本作は防衛省・自衛隊の協力のもとに制作され、兵器の描写も正確なものになっており、リアリティーをさらに高めている。官僚たちによって考えられたプランを実行するのは自衛隊である。彼らの職業魂というべきセリフが作品の随所にちりばめられており、そこに注目するのもまた面白いかもしれない。

 昨今のコロナ禍で、政府への不信感、不満が高まっているという事実は否定できない。しかし本作は、日本はまだまだやれる、有能な人材が日本のために尽くしてくれているという安心感を与えてくれる。ぜひ一度、鑑賞してみてはどうだろうか。
文芸評論 3639925336764670860
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