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【連載】「あの日」を訪ねて ②東北大学地域復興プロジェクト〝HARU〟 ~ふれあい大切に 10年脈々と~

  『「あの日」を訪ねて』第2回では、東日本大震災からの復興支援、地域再生を目的とした学生ボランティア団体、東北大学地域復興プロジェクト〝HARU〟を紹介する。代表の菅野友哉さん(教・3)、花田紘欣(ひろやす)さん(工・3)、東泉直宏さん(法・3)に、コロナ禍の前後における活動状況、そして震災や復興と向き合う思いを伺った。




 HARUは、震災発生直後の2011年3月24日に発足した。きっかけは、被災地に何らかの形で支援がしたい、という学内の有志の声だったという。活動地域は宮城県石巻市と山元町で、それぞれの部門に分かれて企画を立案し、現地での活動は部門の垣根を超えて実施している。


 石巻市では、復興公営住宅の集会所で、住民との茶話会やうちわ、鯉のぼり制作などの企画を行ってきた。学生と住民との交流が深まっただけでなく、住民が外に出るきっかけや、住民同士の関わりを増やす機会にもつながったという。花田さんは「住民の皆さんの言葉にじっくりと耳を傾ける姿勢の大切さを学べた」と振り返る。 


 山元町では、主に地域で開催されるイベントへの参加や補助を行ってきた。毎年9月には、「やまもとスポーツまつり」を主催。スポーツを通じた世代間交流を促進し、少子高齢化の進む山元町を盛り上げる取り組みになったという。


 菅野さんは「HARUの活動理念として、支援者と被支援者という関係ではなく、人と人という同じ目線から支援することを心がけてきた。活動の中でも、現地住民の皆さんとのふれあいを大切にしている」と話した。このような姿勢は、HARUの設立当初より受け継がれてきたものだという。


 そんな中、昨年より突如として猛威を振るった新型コロナウイルス感染症。HARUにおいても、従来のような現地での支援活動を行えない日々が続いている。しかし、そんな状況でも、「HARU10年の歩み」と題した記念誌の作成と、東泉さんが主導する「東北大生による震災10年を考えるプロジェクト」を二本柱として歩みを進めてきた。同プロジェクトでは、震災に関わる映像を視聴し、意見交換を行う学習会や、防災を身近に考えるワークショップを実施。東泉さんは「新型コロナの話題に終始しがちな現状だが、震災や防災について考えるための問題提起として活動を始めた」と語る。


 そして現在、HARUでは石巻市や山元町との連絡を通じ、オンラインでも実施可能な企画を模索している。さらに、これまでの活動で得た教訓や知識を生かし、防災情報の発信にも取り組む予定だ。



若者の力を届けたい


 震災からの復興支援に向け、学業の傍らで被災地へ赴くHARUのメンバーは、大学生が復興に携わることにどのような意義を見出し、原動力としているのか。この問いに対し、3人は共通して「若者の力を被災地に届け、現地の方々に活力をもたらすこと」と答えた。被災地に住む高齢の人々は、若い世代の人と関わる機会が必ずしも多くない。その中で、大学生が実際に足を運び、交流を深めることは現地の人々にとって大きな意味を持つという。また、菅野さんは「復興に携わって得た経験や気づきを、家族や友人などの身近な人に伝えることで、防災意識を共有していくことにも意味がある」と語った。


 そして今年、HARUが震災の復興支援を始めてから10年、すなわち「震災から10年」が経過した。この言葉を、3人はどのように受け止めているのか。菅野さんは「あくまで時間の経過に過ぎないし、特別な意味を与えなくていいと思う。小さな復興の積み重ねが10年続いた結果が現在で、これからも復興は続いていく」と話した。花田さんは「震災について思いをはせるきっかけになればいい」と語った。東泉さんは「震災で尊い命がどれだけ失われたか、町がどれほどの被害を受けたか、そしてそこからどのように復興が進んできたのか。それらを改めて考えるきっかけにしてほしい」と話した。


 10年という歳月の流れを区切りにせず、今後も震災からの復興に向けたHARUの活動は継続していく。菅野さんは、新入生をはじめとした本学学生へ「震災に関わるボランティアと聞くと、なじみの無かった人にとっては壁を感じる部分があるかもしれない。けれど、実際に活動に参加してみれば、話を聞くだけでは分からない魅力に気づくと思う。興味をもった人は、HARUをはじめとした本学のボランティア団体に顔を出して、一度活動に参加してみてほしい」とメッセージを送った。

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