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【ニュース】下水調査で新型コロナ感染者数を予測 佐野教授らが公開検証

  本学工学研究科の佐野大輔教授らの研究グループは昨年11月8日、都市下水中の調査結果を基にした新型コロナウイルス感染陽性者数の予測に関する実証実験を、公開で開始した。登録者へのメールでの情報配信をすでに開始しているほか、今後は医療機関等での情報活用が期待される。


登録者に送信される予測メール
(1月10日配信)


 感染症に関する都市下水調査は、感染者の排せつ物に含まれる病原体を、下水の採取、分析により調べるもの。佐野教授らの研究グループでは仙台市内の下水処理場から採取したサンプルを分析し、機械学習を用いて、仙台市内の1週間の新規感染者の発表人数を予測している。サンプルの採取から分析までには、実験室での濃縮や遠心分離による固形物の集積、遺伝子の抽出とPCR法による増幅など、数段の手順を踏んでいる。


 下水を用いた新型コロナ分析は、新型コロナが流行を始めた一昨年から、世界各地で行われてきた。下水調査はさまざまな要素が複雑に関係するため分析が難しく、いかに正確な測定とするかがカギとなっていた。


 多くの研究者が測定精度向上に注力する中、佐野教授は測定後の予測プロセス、つまりデータを「どう使うか」に着目した。測定結果として用いる情報量は最低限に減らし、AIにパターンを学習させ、予測することを重点とする研究を進めた。佐野教授は、測定と分析は「基本は両輪」とする一方、測定精度に限界がある以上、分析に重きをおいた研究には大きな意味があると話す。


過去4ヶ月の新規感染者の発表人数と予測値
(1月10日現在)(情報発信サイトより)


 機械学習での予測では、直近6週間の分析結果のみならず、前週の発表人数や仙台市のワクチン接種率も情報として入力している。これらの情報からパターン学習をさせることで、より精度の高い予測となる。さらなる精度向上のため、今後は人流の情報などの利用も検討している。


  ◇  ◇  ◇


 佐野教授が下水における新型コロナの分析を開始したのは、一昨年6月。以前から仙台市などと共同で、下水中のノロウイルスの濃度調査は実施していたが、同年2月に世界的流行が始まった新型コロナに関する下水調査としては、「乗り遅れた」方だった。その上、はじめはこの研究に消極的だったと話す佐野教授は、「『うまくできないんじゃないか』と思っていた」と当時の心境を明かす。


 理由の一つには、以前から取り組んでいたノロウイルスの情報発信との違いがあった。


下水中のサンプルの採取を行う仙台市職員。
採取されたサンプルは週に2回、
佐野教授のもとに送られる(同市提供)
 

 ノロウイルスは、り患から診断まで数日を要し、保健所を経て厚労省が集計結果を公表するまで約2週間を要する。そのため、感染拡大の兆候を事前に発信することができる下水調査は、非常に有意義だった。


 一方の新型コロナは、毎日感染者数が発表されており、当分は役に立たないのではないかというのが、佐野教授の見立てだった。コロナ禍がある程度終息し、ノロウイルスと同じような扱いになる将来を見据え、そのための準備のつもりで研究を始めたという。下水調査なども専門とする水環境学会でも、当時は意見が割れていた。


 状況が変わったのは昨年5月。NHKの番組に出演した際にデータを整理したことがきっかけだった。およそ1年間蓄積した下水調査のデータと実際の感染者の発表人数に相関がみられ、かつ感染者の発表人数が増加する数週間前に、下水からの新型コロナウイルス検出陽性率が増加していたのだ。この結果をもとに機械学習を用いた予測を行った結果、思いのほか傾向を良くつかむことができた。「これはいける」。確信した佐野教授は分析精度の向上や調整を重ね、11月、公開検証を開始した。


佐野教授は、今後データの信頼性を
さらに高めていきたいと意気込む


 現在、予測結果は本学と山形大、仙台市、株式会社日水コンが共同運営している「下水中ノロウイルス濃度情報発信サイト」で毎週公表されている。登録者へのメールでの情報配信も開始しており、将来的には病床数確保の目安としてや、必要な薬の量の目安としても、活用が期待される。


▽下水中ノロウイルス濃度情報発信サイトhttps://novinsewage.com/

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