【とんぺー生の夏休み2022】審査会で活発な議論 ~審査委員長 講評~
とんぺー生の夏休み2022の審査会が先月15日、仙台市内で実施され、厳正な審査を下に各賞の受賞作品を選出した。
審査会では、小紙編集長の藤井千尋(文・3)が審査委員長を務め、報道部員11名が審査委員を務めた。審査は匿名の状態で行われ、委員らは約1時間半にわたり活発な議論を交わし、各賞の受賞作品を選定した。
学生ならではの「等身大」
今回は全体的にレベルの高い作品が集まったと感じた。小説部門で最優秀賞を獲得した『石刃にまつわるいくつかの反論』は、考古学という一般の人になじみのない分野をテーマとしたところが挑戦的だ。出だしから世界観に引き込まれ、主人公たちの自然で軽妙な会話の掛け合いが心地よかった。一方、クライマックスである事件の真相がやや平凡で、淡泊な印象があった。終わり方も唐突で寂しい。もっと読みたいと思わせる作品だけに、もったいないと感じた。優秀賞となった『産土の手紙』は主人公、故郷、そしてブナの三者が変化していく現実味と、物語全体のファンタジー要素がうまく調和していた。青臭い主人公が抱える悩みや、寂れていく故郷、主人公が話す方言は、親近感が湧くと審査委員からも好評だった。しかし、誰がしゃべっているのか読み取りづらいセリフや、急な展開によってあまり作品に没頭できず、惜しくも最優秀賞には至らなかった。
エッセイ部門で最優秀賞を獲得した『スカートをはかない女』は、「私」がスカートを履かなくなった原因である、痴漢の場面から始まる。筆者が成長するにつれ、性自認の葛藤や思春期の悩みを乗り越えていく様子が描かれている。筆者の心情の変化が繊細に語られる点が評価を集めた。一方で、エッセイ全体がやや長く、文章にリズム感がないため、途中で飽きてしまうという意見も挙がった。余分な表現を排除し、展開を整理するとよりよくなるのではないか。惜しくも受賞しなかった作品については、読み手を意識し、自らの体験をユニークに語りかける工夫をしてほしい。
冒頭でも述べたように、今回はレベルの高い作品が集まった。学生にしか書けない、等身大の物語やエッセイは、読者の共感を誘うだろう。学生ならではの体験や悩みを存分に詰め込んだ作品をこれからも期待している。