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【研究成果】ALS発症機構 一部新たに解明 治療薬開発の可能性高める

 本学多元物質科学研究所の米倉功冶教授、京都大の関山直孝助教、理化学研究所の高場圭章研究員、眞木さおり研究員らの研究グループは9月12日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症機構の一端の解明をプレスリリースで発表した。ALSは、体の筋肉を動かす神経が障害を受け、筋肉が徐々に動かせなくなる病気。発症の機構が不明であったことから、指定難病に認定されている。



 研究グループはタンパク質の一種「TIA‐1」の一部アミノ酸の変異が、遺伝性のALSに見られることに着目し、ALSの発症とTIA‐1の変異の関わりを解明した。先行研究により、この二つには何らかの関係性があるということは確認されていたが、どういった過程をたどり、ALSの発症へ至るのかは解明されていなかった。



 米倉教授らは試料の分子を結晶化したものに電子線を照射し、その回折パターンから構造を解明する三次元電子線結晶構造解析を用いて、変異を持たない野生型TIA‐1と変異型TIA‐1の性質を分析した。その結果、変異型TIA‐1では、本来特定の立体構造を持たない天然変性タンパク質領域の、変異し凝縮した状態である、アミロイド繊維を形成しやすくなることが分かった。



 細胞内でのタンパク質の局所的な凝縮は「液‐液相分離」と呼ばれ、多くの関心が寄せられている研究分野である。近年の研究では、健康的な人の細胞内でも、形成と分離を繰り返す可逆的なタンパク質の凝縮は見られ、必ずしも疾患を誘発する現象ではないことが明らかにされている。



 米倉教授によると、今回の研究で分析された変異構造には、TIA‐1の凝縮を促進させ、不可逆的に固定化する効果が見られるという。凝縮したタンパク質は、体内の状態を一定に保とうとする恒常性から外れ、蓄積されることにより、神経などに異常を来す原因となり得る。この発症の過程は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病といった他の神経疾患にも共通して見られる。



 米倉教授は「ALSの発症には複数の要因が複雑に絡んでいるので、まずはそれを解明するための手法を開発する必要がある。私たちが開発してきた電子顕微鏡の解析手法が役に立った」と本研究を振り返った。



 その上で、「自分が興味を持った研究開発を続けたことで、ALSの発症機構の一端を解明することになり、治療薬の開発の可能性を高めるといった社会への貢献ができ、幸せを感じている」と本研究の成功に対する喜びと期待を語った。

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