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【連載】復興再考~原発事故後の町づくり~ ①福島県双葉町 復興推進課

 東日本大震災の原発事故で、帰還困難区域とされた地域の復興のあり方を、考える新連載「復興再考―原発事故後の町づくり」。第1回目の今回は、福島県双葉町を訪れ、町役場の復興推進課を取材した。



 双葉町では、原発事故以降、全住民の避難が続き、今年8月30日に一部地域で避難指示が解除された。復興に向けて、新たに歩みを始めた双葉町は、町の風景と人々のつながりを再構築する試みの中にあった。(野澤凜太郎)


復興推進課主幹・藤岡俊之さん
=10月19日、双葉町役場新庁舎


再生への一歩


 目まぐるしい日々だった。震災翌日の2011年3月12日早朝、町民は詳しい事情も分からぬままバスに乗り、双葉町から40キロ以上離れた福島県内陸部の川俣町へ避難した。その後も状況は悪化し帰れない日々が続いた。町民と役場機能の避難先は、埼玉県のさいたまスーパーアリーナ、旧埼玉県立騎西高校、福島県いわき市を転々とした。



 今年8月30日、特定復興再生拠点として除染やインフラ復旧が行われてきた、町の中心部で避難指示が解除され、町民の帰還が始まった。9月5日には新庁舎が開業し、町役場も町に戻った。避難指示が解除されたのは、町の総面積の約15%とごく一部だが、町の復興への大きな一歩だ。町は、生活環境の整備を進めている。



 限られた土地を最大限活用するため、町は避難指示解除直後から「空き家・空き地バンク」を始めた。これは、使われていない家や土地の持ち主が登録した情報を、物件を利用したい個人や事業者に提供する制度だ。物件登録の数は増加しており、町はさらなる活用を促していく。



 また、JR双葉駅の西側に86戸の災害公営住宅の整備も進めている。現在25戸が完成しており、うち18戸で入居が始まっている。



 他にも、スーパーなどの商業施設は今後1、2年をめどに開業を目指し、診療所は来年2月に開業を予定している。また、町民の雇用を創出するため、町の東部に産業団地を設け、企業の誘致も進めている。



コンパクトな町へ


 不自由のない暮らしを取り戻す取り組みが進む一方で、昨年度の意識調査では「町に戻らないと決めている」と回答した町民が全体の約61%と過半数を占め、「(将来的な希望も含めて)戻りたいと考えている」と回答した町民は約11%にとどまった。



 町は、除染の状況や復興の現状を伝えていくことに加えて、年始の恒例行事だったダルマ市などのイベントを通して、ふるさとの絆を取り戻していくことを目指す。



 また、双葉町に新たに移住する人を積極的に受け入れつつ、少ない町民でも町を維持できるような、地域全体で機能を分け持ったコンパクトな町を目指す。



新たな絆を結ぶ


 「もとの状態に戻ることが復興ではない」

 取材した双葉町役場の藤岡俊之さんの言葉は、もといた場所に容易に戻れない原子力災害ならではの事情を表している。人も町も変わりゆく中で、新たな絆を結んでいくことが必要だ。

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