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【インタビュー】努力最大限に生かせる入試を~受験生こそ、入試設計の要~

 「大学入試は『妥協の芸術』である」。本学高度教養教育・学生支援機構の倉元直樹教授は、設計する立場から見た大学入試の性質をこう表現する。受験する立場以外からみた「大学入試」はどのようなものだろうか。大学入学者選抜制度について、本学の入試を中心に話を聞いた。(聞き手は杉山鷹志)


くらもと・なおき

本学高度教養教育・学生支援機構教授。大学入試センター研究開発部助手を経て、1999年より本学アドミッションセンター助教授(組織改編により現所属)。博士(教育学)。専門は教育心理学(教育測定論、大学入試)。手にしているのは2023年度入学者用大学案内。「キャンパスに寝転がって空を見上げる」モチーフの表紙をめくると、製作者の思いがつまった受験生のための東北大学情報が紙面いっぱいに並んでいる。



大学入試の大原則


 大学入試の目的は「アドミッションポリシーにおいて求める学生像に見合う学生を、定員通りに確保すること」この一点に尽きます。この目標を達成するためには、「公正かつ妥当な方法」で選抜を行うことと、「急な変更で受験準備の努力を無駄にさせない」ことの二つが必要不可欠です。まさに信頼こそ入試の根幹といえるでしょう。



 しかし、現実の入試の仕組みは、幾重にも重なりあった相矛盾する理念や条件の絡み合いです。つまり立場の違いや、理念と現実に実施することのギャップが生じてきます。そこで、皆が満足する仕組みがないことを前提として、どうにかそれらを解きほぐして妥協点を探っていくことが、大学入試制度設計においては非常に重要になってきます。「妥協の芸術」とは、このような大学入試の性質を端的に表現したものなのです。



東北出身受験者の割合減少


 東北大学では2008年度入試を境に、特に一般選抜において合格者における東北地方出身者の割合が減少しています。東北地方の人口減少を加味しても、その減りは顕著です。全国から入学者が来ることは、裏を返せば「東北地方出身者が入りたくても入れない」ことを意味しています。



 その要因のひとつとして私自身は、未履修問題の波及による格差の拡大があるのではないかと考えています。未履修問題が社会問題化したことで、高校では学習指導要領の遵守が徹底されました。しかし、元々過密であったカリキュラムがそのままにされたため、結果として現場の裁量が狭められました。そのしわ寄せが、受験に関するインフラやリソースが整っていない地方の高校に押し寄せたと考えています。



 具体的には、リソースの中でも一番大きい存在である教員にますます余裕がなくなって繁忙を極め、入試問題の分析を行えなくなったり、それを授業に落とし込んだりすることが厳しくなったことが挙げられます。特に東北地方では、そのような地域が大半だったといえるでしょう。



 未履修問題に際して、高校は、コンプライアンスという観点からは加害者というような印象で扱われてしまいましたが、右記の観点から考えると、被害者的な側面もはらんでいると思います。



 なお、未履修問題と同時期に後期日程の廃止といった入試制度の変更があったことなど、合格者における出身地域割合の変化に影響を与えたと考えられる要因は、様々あることを付け加えておきます。



受験生をいかに守るか


 東北大学の入試は、受験生や評価を行う教員に過度な負担がかからず、かつ効果のある評価方法を目指して設計されています。主体性の評価に関して「チェックシート」で申告する方法はその一例です。



 主体性の評価に関して一つ付け加えておくと、そうした評価を気にない生活を送ってほしいのです。今やりたいことを一生懸命にやったうえで、ふと振り返った時にチェックしてもらう、それだけで十分です。



 こうしたことは、大学入試の大原則と合致しています。それはまさに「受験生保護の大原則」です。いかにして受験生を守り抜くか、という社会的に意義のある仕事に就けていることを私自身は誇りに思っています。



ここからは気持ち


 東北大学では、総合型選抜と一般選抜とで「求める学生像」を区別していません。これはつまり、総合型選抜のために勉強してきたことも、一般選抜の際に役に立つようになっていることを示唆しています。データ上では、AO入試Ⅲ期で合格する人のほとんどが前期日程にも出願しています。AO入試Ⅲ期に出願している方には、こうした制度設計を改めてお伝えしたいと思います。ここからはもう気持ちの持ちようが大切です。ぜひとも前向きで強い気持ちをもって受験に臨んでください。



 東北大学生における自宅生の割合はわずか15%です。ほとんどの方は実家から遠く離れて受験されているかと思います。そのような状況の中で不安に思われることも多々生じるかと思いますが、多くの同じ境遇の受験生がいるのですから、とりあえず来てみればなんとかなります。心身のコンディションを十分に整えて、受験に向けて頑張ってくださいね。



【未履修問題】

 高等学校等が、学習指導要領では必履修であった教科・科目を開講せず、生徒に履修させていなかった問題。 2006年10月に富山県の事例が発覚し、全国に波及した。



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