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【国際卓越研究大】候補選定から2カ月 正式認定に向け調整へ

 「国際卓越研究大学」の認定候補に本学が選定されて2カ月が経過した。現在は文部科学省の有識者会議による審査が引き続き行われ、来年度の正式な認定に向け計画を調整しているものとみられる。助成の開始が刻一刻と近づく今、国際卓越研究大学制度のこれまでを振り返る。





 政府による10兆円規模の大学ファンドが科学技術振興機構(JST)による運用の下、昨年3月に始動した。株式や債券などへの投資で年3千億円を目標に運用益を上げ、国際卓越研究大学に認定された数校への支援の財源とする。昨年度は604億円の赤字で、運用成績は元本比でマイナス0・6%となった。


 昨年度の国立大学への運営費交付金は1兆786億円だった。本学では運営費交付金が収入の約3割を占めるなど、基盤的経費として各国立大学法人に交付されているものだ。その総額は近年ではほぼ横ばいだが、2004年度の国立大学法人化の制度創設当初と比べると約1割減っている。その一方、研究者が自ら獲得する期限付きの「競争的資金」が増加傾向にある。認定された数校のみを支援する国際卓越研究大学制度はまさにこの路線にあり、「選択と集中」を強め、大学間の格差を広げるとの懸念もある。


 ただ研究力が高い大学が国際卓越研究大学として認定されるわけではない。認定されるためには世界の有力大学に比肩する新たな事業・財務戦略や、大学全体に及ぶ統治体制の改革が求められる。


 欧米の主要大学は数兆円規模の独自基金を運用している。国内の大学は規模および運用体制の整備がともに不十分であり、各大学の基金による資金獲得は厳しい状況だ。これを国の資金を用いた仕組みで打破しようと打ち立てられたのが、10兆円規模の大学ファンドだった。


 もっとも、国際卓越研究大学の認定校においても年3%の事業成長が課されるなど、「研究成果を上げればお金がもらえる」というだけの話では到底ないようである。例えば本学は計画案で、民間企業などからの研究資金の受け入れ額を25年で10倍以上にするなどの野心的な目標を掲げた。対して文科省の有識者会議は9月に公開した資料中で「従来の成長モデルの延長線上では達成は困難」と指摘し、戦略の深掘りや見直しを求めていた。本学はこの他にも経営機能の強化を図り、学外の有識者を含む「総合戦略会議」を新設するといった体制改革を検討するなど、多様なステークホルダー(利害関係者)との協働を重視した、閉塞感のない「エンゲージメント型大学経営」を目指しているという(先月、本紙報道)。


 国際卓越研究大学に申請したのは国立8校、私立2校の計10校。うち今年7月から現地調査の対象となったのは、本学のほか東京大と京都大の3校だった。9月に認定候補が本学に絞られると、大野総長は「選定は大変光栄。世界をリードする研究大学を目指し、最終的な認定に向けて全学一丸となって引き続き力を尽くす」とコメントした。東京大の藤井総長は「選定されなかったことは残念に思う」としつつ、「自律的で創造的な活動を拡大する『新しい大学モデル』の実現を目指して、引き続き全学を挙げて改革に取り組む」と述べた。京都大は同時点で、HP上には選定に関する声明を発表しなかった。


 文科省は来年度にも2度目の公募を行う方針だ。国際卓越研究大制度は、日本の研究力低下に歯止めをかける一手となるか。

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