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河北新報社 編集局次長 今里直樹さん 新聞は時代の見取り図

 仙台市に本社を置く株式会社河北新報社は、2021年に紙面で展開した「東日本大震災10年報道」で、優れた報道の担い手に贈られる新聞協会賞を受賞している。当時取材班代表を務めた同社の今里直樹編集局次長に、新聞週間に合わせて話を聞いた。


「新聞を読むことによって得られる視野の広さは、
寛容さにもつながる」と今里氏


■時代の見取り図

 河北新報は東北6県を俯瞰するブロック紙。ローカルメディアとして、地域の日常を記録することが使命の一つだ。地域で今何が起きていて、人々がどう感じているか。地域の今とこれからを紙に刻み込んでいくのが新聞の役割だと思っている。


 世の中ではさまざまなことが起きていて、人々の興味関心もまたさまざまだ。必要とされるニュースと伝えたいニュースをかみ合わせ、どう伝えるかということと、新聞は日々向き合っている。


 新聞は、時代の見取り図のようなものを作っている。新聞を読むと、今自分が置かれている社会がどうなっているかが分かる。紙面に自分の関心があるものと合致する記事があるかもしれない。そういった新しい気付きを、新聞は読者に与えられるのではないかと思う。



■事実を確定させる

 継続して取材する時間軸が、新聞は他のメディアよりも断然長い。震災の報道では記者が10年以上当事者に寄り添いながら、丁寧に伝え続けてきた。地域に根差した継続性が新聞というメディアの強みの一つだ。


 有象無象の情報が流れている中で、新聞には事実を確定させる力があると思う。例えば、遠く離れた場所で大きな災害や紛争があって、SNSで情報が飛び交っているとき。新聞が正確な事実を報道することによって、その出来事を社会に定着させていくことができる。


 事実を確定させる力が新聞は他のメディアより強いと思う。新聞が報道するニュースに対する信頼は、多くのメディアの中で依然として高い。曖昧な情報が無責任に飛び交いやすい時代にあって、事実を検証し、本質を見極めるために大量の資源を投入しているのが新聞というメディアだ。



■究極のアナログ

 私自身、記事を書くのはいまだに怖い。思い込みや事実誤認で記事を書いてしまう怖さもあるが、一番は誰かを傷つけてしまうのではないかということ。一方で、問題意識を持って物事を伝えるとき、誰も傷つけない記事はないとも思う。不用意に人を傷つけないよう、記事を書くことの意味や意義をきちんと説明できるように意識している。それが記者として最も大切にしていることだ。


 取材したことすべてを発信するわけではない。それでも、10聞いて1を書くのと、3聞いて1を書くのでは記事の厚みが違ってくる。なるべく多くの情報を集め、自分なりに多角的に物事を見て、最善と判断したものを世に出すことが大事だ。記者の仕事は効率ばかりを追求しては本質を見失う。究極のアナログと言っていい。一見無駄のように見えても、それが記者のキャリアアップの近道だと信じて仕事をしている。



■オピニオン反映

 東北大学新聞は社会に開かれた窓だと思う。東北大学の中の日々の出来事を客観的に評価し、伝え、学生や教職員の役に立つ新聞を目指してほしい。そして、記者一人一人のオピニオンを大事にして、やれる範囲で紙面に反映させていく。それがメディアに携わることの醍醐味であり、真に役に立つ新聞につながるのではないか。

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