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【研究成果】骨再生材料 歯科治療に応用 歯周組織の再生可能に

 東北大学にて開発された生体材料であるOCPcolの実用性がより証明された。歯科・口腔外科領域において骨欠損部の骨の再生だけでなく、正常な歯周組織が再生されることが発見された。歯周病などの治療において、歯の保存が可能となる理想的な歯周組織の回復が期待される。





 本学大学院歯学研究科顎顔面口腔再建外科学分野の山内健介教授と松井桂子助教らの研究グループは9月9日、生体材料を用いることで、歯周組織の再生が可能であることをプレスリリースに発表した。



 今回の実験で使用された生体材料である、リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCPcol)は、本学大学院医工学研究科の鎌倉慎治名誉教授らのグループが開発した、東北大発の骨再生材料である。OCPcolは、従来の骨代替材料と異なり、細胞や成長因子を補充しなくても骨再生を実現できる。操作性の良さや管理の簡便さからも画期的な生体材料で、2015年からの臨床治験を経て、22年6月より上市されている。



 今回の実験では、ビーグル犬の天然歯根周囲に骨欠損部を作り、OCPcolを埋入または非埋入し、3カ月間の経過観察を行った。その結果、非埋入では十分な骨再生は認めなかったが、埋入部には十分量の新生骨がみられた。さらに骨と歯根の間に歯根膜を介在した結合組織性付着が生じていることを確認した。つまり、天然歯根に隣接する骨欠損部にOCPcolを応用すると、正常な歯周組織が再生されることを発見した。



 今回の発見により、ヒトの天然歯が残存する顎骨欠損治療への応用が期待される。良性や悪性の腫瘍性病変や顎骨嚢胞、あるいは骨髄炎に対する顎骨の切除手術などによって骨欠損部は生じる。特に、腫瘍や嚢胞摘出後の骨欠損部に隣接する天然歯は、骨支持を失い動揺のため抜去を余儀なくされることがある。その際に、OCPcolを用いることで歯の骨支持が回復し天然歯の抜去を回避できる。



 さらに、「(OCPcolを)現時点で歯周組織再生療法に使用した場合のリスクはないと思います」と松井助教は語る。骨形成を誘導活性化するヒト遺伝子組換え骨形成タンパク質(BMP)に関する文献的報告や、骨補填材として使用されているβ―TCPと比較検討した自実験から、健常骨との同質性や、後続永久歯の自然萌出などの生理的な順応さにおいて、OCPcolは優れた結果が得られている。松井助教はOCPcol由来の骨は、問題のない自然な骨といえると話した。



 また、OCPcolは医科領域での発展的な適用も考えられる。例えば、脳神経外科領域では、皮膚を切開して頭蓋骨に穴を開けた場合、15〜20ミリメートル程度の穴を残したまま、切開した皮膚を縫合するため、術後に頭皮が陥凹していることがある。そこで頭蓋骨の穴にOCPcolを応用し骨が再生されれば、陥凹が改善し、審美的な問題は解決し、骨欠損部分の保護について特別な配慮も不要となりうる。



 本研究の結果は、歯周病などによって自組織が破壊されても、自分の歯や歯茎を取り戻すことにつながる可能性を示唆している。研究の発展が今後も期待される。

研究成果 7483490416851280012
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