亀岡八幡宮で初詣 市内随一の石段
もはや過ごしやすいとはいえない冬の風が、押し迫る年の瀬と新年の到来を予感させる。新年といえば初詣だ。初詣の候補地として、地下鉄川内駅から歩いて5分ほどの場所に位置する「亀岡八幡宮」を訪れた。
神社は木深い山に隠れているため、その全貌は容易にはつかめない。辛うじて視認できる石鳥居も砂利道と同化し、存在自体が奥の山の一部のような印象を受けた。
石鳥居をくぐり抜けると、あの神隠し映画を思い起こさせる赤い橋が現れる。人であることを悟られないよう息を止めて渡るが、その先には見上げるほど長く急な石段がそびえていた。息を止めたことを後悔しながら、乱れた呼吸で石段を上る。少し開けた場所に出て、呼吸を整え後ろを振り返ると、いつの間に結構な高さまで上っていたことに気付く。だが前を向くと、一層長く急な石段が待ち構えていた。
一休みしてから再び歩きだす。乾いた落ち葉を踏みしめる音を楽しみつつ石段を上りきると、社殿が現れる。ここでも後ろを振り向くと、今度は木々の隙間から仙台の市街地が広がっていた。うっすらと赤みがかった冬枯れの自然の中から見える都市の無機質な風景は、空になじみ美しく、感動すら覚えた。
元旦の参拝を期して来た道を戻れば、すぐに川内キャンパスに着く。日常の風景に戻った今、先ほどまでどこか浮世離れした場所にいたことを思い出させるのは、寒い季節であるにもかかわらずじっとりとかいた背中の汗だけであった。
帰宅後に調べると、亀岡八幡宮の参道には仙台市内では最も多い約335もの石段があることが分かった。かつては年間日数と同じ365段であったというこの坂を、1年の日々を踏みしめるように歩くことで良い1年が送れそうだ。初詣先を決めかねている人には、亀岡八幡宮をおすすめしたい。(新村輝海)