【特別インタビュー】作家 森見登美彦さん ~大学時代の読書体験 現在の文体に影響~
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2003年に『太陽の塔』でデビューし第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。07年には『夜は短し歩けよ乙女』が本屋大賞に選ばれる。第156回直木賞候補に『夜行』がノミネートされるなど活躍を見せている人気作家の森見登美彦さんに話を伺った。
―どのような少年時代を送ったか
幼い頃は空想をするのが好きで、身近な場所にも何か不思議なことが隠れているのではないかと考えることも多かったです。また、宮崎駿監督の作品にも親しんでいました。
―いつから小説を書き始めたのか
小説の執筆は小学生時代から行っていました。しかし、当時は作品を人に見せることが恥ずかしかったので、家族だけに見せていましたね。高校に入学してからも一人の友人以外には、小説を書いていると明かしませんでした。
その代わりに、学園祭では「噂男」のタイトルで劇の脚本を書きました。今でははっきりとは内容を覚えてないですが、主人公が噂で町の人を扇動していく作品だったと記憶しています。
―大学時代はどのように過ごしたか
大学時代はライフル射撃部に所属していました。競技に打ち込んだというよりは、部活の雑用や後輩の面倒を見るのが主でしたが。また、作家は将来就く仕事の選択肢としてあったので読書には多くの時間を費やしました。現代の作家の作品に手を出しつつも、戦前、昭和に書かれた作品を読むことが多かったです。当時の読書体験は現在の私の文体に影響を与えています。私が学部生時代に所属した研究室は教授の立てた目標に全メンバーが取り組む、団結力の強いところでした。大学生活の後半には一年間の休学を経験しました。今は作家として生活できているので、冷静に思い返せますが、当時は不安になることが多く、とても大変な日々でした。大学院生活は対照的にそれぞれがやりたいことを行う自由な雰囲気の研究室で送りました。
―大学院での研究対象は
大学院では竹について研究しました。研究テーマは竹の酵素についてです。竹は植物の中でも特に成長の早い種類です。その成長を支える酵素を抽出して分析したり、タケノコの細胞を培養してみたりしたこともあります。自分の思い通りの結果を得ることは難しかったですが、楽しかったです。
―大学院を卒業した後は
国会図書館の関西館に就職し、本の受け入れ部署に配属されました。私が主に担当したのは博士論文や外国の学術誌で、自分の同級生や先輩が書いた博士論文に出会うこともありましたね。その後東京の国会図書館に異動し、館内の情報システムを担当しました。受け入れ部署での仕事がルーティンワークに近かったのに対し、こちらはイレギュラーにも対処する必要があったので、作家との兼業は体力的に大変でした。それでも、仕事場では作家であるということで仕事の量には配慮をいただけました。兼業作家として活動を続けるうちに、作家活動一本に絞っても大丈夫だと思えるようになり、退職しました。
―現在はどのような作品を執筆しているか
小説BDCにて、『シャーロックホームズの凱旋』という小説を連載しています。この作品は架空の街であるヴィクトリア朝京都を舞台としています。主人公であるシャーロックホームズは推理をしない、ホームズのライバルとして有名なモリアーティ教授は自己啓発本の著者になっているなど一風変わったシャーロックホームズシリーズのパロディです。『熱帯』も近日中に発表する予定です。この作品は『きつねのはなし』、『夜行』のようなミステリアスな雰囲気と、『太陽の塔』のような明るい雰囲気が入り混じった作品です。
―作品の執筆はどのように行うか
デビュー作である『太陽の塔』を執筆する際は身の回りにいる大学生の言動や行動などを参考にしつつ、常日頃考えていた「こういうことがあれば面白いのに」と思えるアイデアを組み合わせていきました。一つだけでは使えなかったアイデアも、ほかのアイデアと組み合わせることで魅力が引き出されることもあります。例えば、映画「CUBE」を見て思いついた無限につながる四畳半の部屋のイメージは、そのままではどうということもありません。しかし、このアイデアが、異なる大学生活を送った主人公が多数存在するイメージと結びつくことで「四畳半神話大系」にて重要な役割を果たすアイデアになりました。
―新入生へメッセージを
今の大学生は私が大学に通っていた頃の学生と比べ、真面目な子が多く、堅実な大学生活を過ごしているという印象があります。もちろん真面目でいるのは素晴らしいことですが、私は大学生活で小さい失敗をしていればよかったと感じています。失敗を経験することによって、自分の進んでいる方向が過ちであったと気づき、改善できます。しかし、失敗をしなければその分、ずれに気づく時期が遅れてしまいます。大きな失敗をした後にはずれも大きくなっているので、修復するのはかなり難しいです。失敗をすれば必ず記憶に強く刻まれるので、皆さんの成長につながるでしょう。
四畳半の自宅に閉じこもっているばかりでは何も起こりません。大学生活では外に出て様々なものや人と関わってください。
―どのような少年時代を送ったか
幼い頃は空想をするのが好きで、身近な場所にも何か不思議なことが隠れているのではないかと考えることも多かったです。また、宮崎駿監督の作品にも親しんでいました。
―いつから小説を書き始めたのか
小説の執筆は小学生時代から行っていました。しかし、当時は作品を人に見せることが恥ずかしかったので、家族だけに見せていましたね。高校に入学してからも一人の友人以外には、小説を書いていると明かしませんでした。
その代わりに、学園祭では「噂男」のタイトルで劇の脚本を書きました。今でははっきりとは内容を覚えてないですが、主人公が噂で町の人を扇動していく作品だったと記憶しています。
―大学時代はどのように過ごしたか
大学時代はライフル射撃部に所属していました。競技に打ち込んだというよりは、部活の雑用や後輩の面倒を見るのが主でしたが。また、作家は将来就く仕事の選択肢としてあったので読書には多くの時間を費やしました。現代の作家の作品に手を出しつつも、戦前、昭和に書かれた作品を読むことが多かったです。当時の読書体験は現在の私の文体に影響を与えています。私が学部生時代に所属した研究室は教授の立てた目標に全メンバーが取り組む、団結力の強いところでした。大学生活の後半には一年間の休学を経験しました。今は作家として生活できているので、冷静に思い返せますが、当時は不安になることが多く、とても大変な日々でした。大学院生活は対照的にそれぞれがやりたいことを行う自由な雰囲気の研究室で送りました。
―大学院での研究対象は
大学院では竹について研究しました。研究テーマは竹の酵素についてです。竹は植物の中でも特に成長の早い種類です。その成長を支える酵素を抽出して分析したり、タケノコの細胞を培養してみたりしたこともあります。自分の思い通りの結果を得ることは難しかったですが、楽しかったです。
―大学院を卒業した後は
国会図書館の関西館に就職し、本の受け入れ部署に配属されました。私が主に担当したのは博士論文や外国の学術誌で、自分の同級生や先輩が書いた博士論文に出会うこともありましたね。その後東京の国会図書館に異動し、館内の情報システムを担当しました。受け入れ部署での仕事がルーティンワークに近かったのに対し、こちらはイレギュラーにも対処する必要があったので、作家との兼業は体力的に大変でした。それでも、仕事場では作家であるということで仕事の量には配慮をいただけました。兼業作家として活動を続けるうちに、作家活動一本に絞っても大丈夫だと思えるようになり、退職しました。
―現在はどのような作品を執筆しているか
小説BDCにて、『シャーロックホームズの凱旋』という小説を連載しています。この作品は架空の街であるヴィクトリア朝京都を舞台としています。主人公であるシャーロックホームズは推理をしない、ホームズのライバルとして有名なモリアーティ教授は自己啓発本の著者になっているなど一風変わったシャーロックホームズシリーズのパロディです。『熱帯』も近日中に発表する予定です。この作品は『きつねのはなし』、『夜行』のようなミステリアスな雰囲気と、『太陽の塔』のような明るい雰囲気が入り混じった作品です。
―作品の執筆はどのように行うか
デビュー作である『太陽の塔』を執筆する際は身の回りにいる大学生の言動や行動などを参考にしつつ、常日頃考えていた「こういうことがあれば面白いのに」と思えるアイデアを組み合わせていきました。一つだけでは使えなかったアイデアも、ほかのアイデアと組み合わせることで魅力が引き出されることもあります。例えば、映画「CUBE」を見て思いついた無限につながる四畳半の部屋のイメージは、そのままではどうということもありません。しかし、このアイデアが、異なる大学生活を送った主人公が多数存在するイメージと結びつくことで「四畳半神話大系」にて重要な役割を果たすアイデアになりました。
―新入生へメッセージを
今の大学生は私が大学に通っていた頃の学生と比べ、真面目な子が多く、堅実な大学生活を過ごしているという印象があります。もちろん真面目でいるのは素晴らしいことですが、私は大学生活で小さい失敗をしていればよかったと感じています。失敗を経験することによって、自分の進んでいる方向が過ちであったと気づき、改善できます。しかし、失敗をしなければその分、ずれに気づく時期が遅れてしまいます。大きな失敗をした後にはずれも大きくなっているので、修復するのはかなり難しいです。失敗をすれば必ず記憶に強く刻まれるので、皆さんの成長につながるでしょう。
四畳半の自宅に閉じこもっているばかりでは何も起こりません。大学生活では外に出て様々なものや人と関わってください。