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【特集・戦争と大學 第1回】寄稿:教育研究の環境守ろうと尽力

 1943年学徒出陣に対応した東北帝大の総長は、第7代総長熊谷岱蔵であった。熊谷の総長在任期間は40年から46年までであり、戦時下の東北帝大の舵取りを担った人物でもあった。学徒出陣に先立ち、41年大学では3カ月の繰り上げ卒業が実施されることになる。この際東京帝大は文部大臣に対しその中止を働きかけているが、熊谷は学内の意見を集約し東北帝大は東京帝大と連携する動きをみせることになる。また44年、熊谷は大学内で教育研究に関するアンケートを実施している。戦局が悪化していく状況下において、①勤労動員と大学教育のあり方②研究のあり方③大学運営・体制のあり方―を全学の教授・助教授からの意見を求めたものとして、現在東北大学史料館に所蔵されている。こうした熊谷の態度からは、大学における教育研究環境を守る姿勢が見て取れる。



 一方、43年10月、入学宣誓式において熊谷総長は「法文学部ニ入学ノ諸子ハ、兎モ角入営スル迄ハ落着イテ学徒ノ本分ニ精進サレタイノデアリマス」と述べており、戦時下の学徒出陣に向けた国の方針と、大学が果たすべき役割との間にある総長としての複雑な式辞となっている。また終戦末期45年3月20日の評議会で熊谷は「此際益々戦力増強ニ寄与スル様ニ大学を進メテ行キタイ」と述べており、科学動員に協力する発言も行っている。こうした熊谷の行動や発言からは、戦時下において大学の教育研究環境を守ることの難しさ、また一定程度戦時に対応せざるを得なかった大学の置かれた状況が浮かび上がってくる。

(本学史料館准教授 加藤諭)



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