【特集・戦争と大學 第1回】解説:学徒出陣の背景
1927年公布の「兵役法」によって、男子には満20歳での徴兵検査を義務づけられていたが、東北帝大生をはじめ大学生などに関しては、最高27歳まで徴兵延期が認められていた。その後、徴兵延期の年齢は下げられていったものの、大学生などは徴兵猶予の恩恵にあずかっていた。
43年、戦況の悪化に伴い「在学徴集延期臨時特例」が公布され、徴兵猶予が停止する。『東北大學百年史』によると、東北帝大では同年10月末から11月にかけて臨時徴兵検査が実施され、現役兵として入隊することになったのは、技術者養成という軍事的要請を理由として入営延期の措置が取られた理科系を除き、法文学部の受験者827名中767名。そのうち翌年9月卒業見込みの者には、11月に仮卒業証書が、翌年9月に正式に卒業証書が授与されることとなり、そうでない学生は「休学」とされた。
同年10月8日には「出陣学徒壮行式」が片平地区で挙行され、熊谷岱蔵総長や法文学部長、学生代表などの壮行の辞に続いて、出陣学生代表が決議文を朗読している=写真=。
一斉入隊以降にも入隊する学生は文系・理系を問わず多数存在した。同年10月に入学し、44年秋の入隊を控える学生らが「経済史」のリポートで心境をつづっている。
戦時下、国内の労働力不足に伴って学徒勤労動員による軍需生産の必要性が増していった。44年1月に「緊急学徒勤労動員方策要綱」、2月に「決戦非常措置要綱」がそれぞれ閣議決定され、年間を通じて常時動員が可能となる。『東北大學百年史』によると、東北帝大においても、工場等への通年動員が実施されていた。45年4月からは「決戦教育措置要綱」により大学の授業は全面的に停止となり、同年5月には「戦時教育令」が施行され、学生は学年に関わりなく、食糧生産・軍需生産・防空防衛・重要研究など戦争に不可欠な業務に動員されることとなったとしている。
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